健常高齢者における多方位口唇閉鎖力 その特性と体格・握力・残存歯との関連

【目的】本研究の目的は,多方位口唇閉鎖力測定装置を用いて,健常高齢者における口唇閉鎖力の特性ならびにその体格・握力・残存歯の状態との関連を検討することである.【対象および方法】長野県在住60歳以上の健常高齢者139名(男性62名,女性77名,平均年齢69.6±5.2歳)を対象とし,口唇閉鎖力,身長,体重,握力,歯の状態ならびに義歯装着の有無をそれぞれ記録した.口唇閉鎖力は,最大努力での口すぼめ運動時の多方位口唇閉鎖力を測定した.口唇閉鎖力の性差の有無,対称的方向別口唇閉鎖力間の関連さらに,全8方向における口唇閉鎖力の総和(総合力)と年齢,体格,握力ならびに残存歯数,前歯保全の有無,アイヒナー分...

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Published in日本顎口腔機能学会雑誌 Vol. 17; no. 2; pp. 125 - 134
Main Authors 足立, 忠文, 中塚, 久美子, 大石, めぐみ, 吉成, 伸夫, 増田, 裕次, 横井, 磯子, 山口, 正人, 黒岩, 昭弘
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本顎口腔機能学会 2010
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ISSN1340-9085
1883-986X
DOI10.7144/sgf.17.125

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Summary:【目的】本研究の目的は,多方位口唇閉鎖力測定装置を用いて,健常高齢者における口唇閉鎖力の特性ならびにその体格・握力・残存歯の状態との関連を検討することである.【対象および方法】長野県在住60歳以上の健常高齢者139名(男性62名,女性77名,平均年齢69.6±5.2歳)を対象とし,口唇閉鎖力,身長,体重,握力,歯の状態ならびに義歯装着の有無をそれぞれ記録した.口唇閉鎖力は,最大努力での口すぼめ運動時の多方位口唇閉鎖力を測定した.口唇閉鎖力の性差の有無,対称的方向別口唇閉鎖力間の関連さらに,全8方向における口唇閉鎖力の総和(総合力)と年齢,体格,握力ならびに残存歯数,前歯保全の有無,アイヒナー分類による臼歯咬合支持域,義歯装着との関連について統計学的解析を行った.【結果】男性の総合力は女性に比し有意に大きかった.方向別口唇閉鎖力は,垂直方向,斜め方向,水平方向の順で大きかった.対称的方向別口唇閉鎖力間において,有意な相関が男性の3方向に認められず,また大きさの対称性が,女性の4方向に認められなかった.男性では,身長,体重と口唇閉鎖力との間に弱い相関が認められたのに対し,女性では,そのような傾向は見られなかった.また男女ともに総合力と残存歯数との間に関連は見られず,アイヒナー分類別総合力の大きさにも有意差を認めなかった.男性において,義歯装着者は未装着者に比し総合力は有意に大きかった.【結論】高齢者における口すぼめ時の口唇閉鎖力には,小児,若年成人とは異なる方向特異性が見られた.また高齢者の口唇閉鎖力は年齢,残存歯の状態との関連は見られなかった.
ISSN:1340-9085
1883-986X
DOI:10.7144/sgf.17.125