日本に侵入した帰化水草オオカナダモとコカナダモにおける遺伝的変異の欠如

南米原産のオオカナダモと北米原産のコカナダモは,現在までに北海道をのぞく日本各地に分布を広げている。両者の侵入や分布拡大の経路を明らかにする研究の一環として両種の遺伝的変異を酵素多型を用いて解析した。その結果,オオカナダモ44集団,コカナダモ26集団について調査した5酵素7遺伝子座における変異は認められなかった。これは日本各地に広がっている両種の集団がそれぞれひとつのクローンであることを示唆しており,単一の系統が栄養繁殖によって分布を拡大した可能性が高いと結論した。また,このような遺伝的変異の欠如は菌類などの感染に対する抵抗力の低下をもたらすため,各地で観察される群落衰退の要因のひとつとして今...

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Published in陸水学雑誌 Vol. 58; no. 2; pp. 197 - 203
Main Authors 中村, 俊之, 角野, 康郎, 鈴木, 武
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本陸水学会 1997
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ISSN0021-5104
1882-4897
DOI10.3739/rikusui.58.197

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Summary:南米原産のオオカナダモと北米原産のコカナダモは,現在までに北海道をのぞく日本各地に分布を広げている。両者の侵入や分布拡大の経路を明らかにする研究の一環として両種の遺伝的変異を酵素多型を用いて解析した。その結果,オオカナダモ44集団,コカナダモ26集団について調査した5酵素7遺伝子座における変異は認められなかった。これは日本各地に広がっている両種の集団がそれぞれひとつのクローンであることを示唆しており,単一の系統が栄養繁殖によって分布を拡大した可能性が高いと結論した。また,このような遺伝的変異の欠如は菌類などの感染に対する抵抗力の低下をもたらすため,各地で観察される群落衰退の要因のひとつとして今後の研究が必要であることにも言及した。
ISSN:0021-5104
1882-4897
DOI:10.3739/rikusui.58.197