無症状で発見された広範な壊死を伴う嚢胞性胸腺腫の1例

症例は53歳,女性.胸部CTで偶発的に70×50mm大の縦隔腫瘤を指摘され,当科に紹介となった.腫瘤は液体成分主体で壁の一部に造影効果を認めた.胸腺腫・奇形腫などを鑑別に,切除方針とした.胸腺右葉に連続し緊満した嚢胞性腫瘤を認めた.被膜と癒着した小範囲の右縦隔胸膜とともに,完全切除しえた.切開すると茶褐色の内容物が噴出し,嚢胞底には泥状の組織が沈殿した.病理所見では,嚢胞内容は壊死組織が主で,壁の一部にAE1/AE3陽性の上皮成分とterminal deoxynucleotidyl transferase陽性のリンパ芽球を認めた.WHO分類のType ABの胸腺腫で,UICC-TNM分類はT1...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 85; no. 2; pp. 244 - 249
Main Authors 高田, 潤一, 井上, 雄太
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2024
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Summary:症例は53歳,女性.胸部CTで偶発的に70×50mm大の縦隔腫瘤を指摘され,当科に紹介となった.腫瘤は液体成分主体で壁の一部に造影効果を認めた.胸腺腫・奇形腫などを鑑別に,切除方針とした.胸腺右葉に連続し緊満した嚢胞性腫瘤を認めた.被膜と癒着した小範囲の右縦隔胸膜とともに,完全切除しえた.切開すると茶褐色の内容物が噴出し,嚢胞底には泥状の組織が沈殿した.病理所見では,嚢胞内容は壊死組織が主で,壁の一部にAE1/AE3陽性の上皮成分とterminal deoxynucleotidyl transferase陽性のリンパ芽球を認めた.WHO分類のType ABの胸腺腫で,UICC-TNM分類はT1N0M0-Stage I,正岡分類はI期と診断した.胸腺腫は,嚢胞性変化・壊死など多彩な病理像を呈するが,広範な壊死を伴うものの無症状の嚢胞性胸腺腫は比較的まれであり,報告する.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.85.244