運転再開支援にて運転再開した患者の運転状況 フォローアップ追跡調査結果

【目的】現在,当院では脳血管疾患患者を対象にした運転再開支援に積極的に取り組んでおり,2017 年7 月に開始してから2021 年4 月まで約200 人の患者へ運転再開支援を行ってきた.より効果的な支援を行う上で,運転再開した患者の退院後の状況把握は重要となる.運転再開支援を行った患者の退院後状況を調査し,データを収集・分析することで運転再開支援評価の有用性を検討することを目的とした.【方法】本研究の対象は、2019 年5 月1 日~ 2021 年3 月31 日までに当院の運転再開支援を実施し,運転再開した患者86 名中,電話調査に対する意義を説明し,同意を得た患者54 名(62.8%)とした...

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Published in九州理学療法士学術大会誌 p. 139
Main Authors 有田, 祐典, 大山, 真一, 宮川, 怜, 松田, 彩, 川嵜, 真, 中西, 航平
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会 2021
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ISSN2434-3889
DOI10.32298/kyushupt.2021.0_139

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Summary:【目的】現在,当院では脳血管疾患患者を対象にした運転再開支援に積極的に取り組んでおり,2017 年7 月に開始してから2021 年4 月まで約200 人の患者へ運転再開支援を行ってきた.より効果的な支援を行う上で,運転再開した患者の退院後の状況把握は重要となる.運転再開支援を行った患者の退院後状況を調査し,データを収集・分析することで運転再開支援評価の有用性を検討することを目的とした.【方法】本研究の対象は、2019 年5 月1 日~ 2021 年3 月31 日までに当院の運転再開支援を実施し,運転再開した患者86 名中,電話調査に対する意義を説明し,同意を得た患者54 名(62.8%)とした.調査時期は退院後1,3,6 ヶ月の3 回とした.調査方法は,入院時の担当セラピストが対象者に電話し,質問紙に沿って聴取した.調査内容は,事故の有無・病前との運転感覚の相違・運転頻度・運転目的で,事故があった場合は,事故の状況まで聴取した.【結果】調査人数は54 人,事故有りは2 人(自損事故),事故無しは47 人,追跡不可5 人であった.病前との運転感覚の相違では,相違無しは27 人,相違有りは20 人であった.病前との相違ありの意見として,麻痺の影響で操作が難しくなった 11 件 ,恐怖感があり,運転範囲・頻度が減少している 9 件であった.運転頻度は,毎日は24 人,週3 ~ 4 は12 人,週1 回以下は9 人,運転して無い(中止も含む)は4 人であった.運転目的は,仕事は24 人,買い物・通院は22 人,練習目的は3 人であった.【考察】今回の調査で,当院の基準をクリア後に運転再開し事故を起こした患者は2人で運転再開した患者の約4% であった.熊倉らの事故状況調査では,70 名中20 名の約28% が事故を起こしたという報告があり,当院運転再開支援評価は有用であることが示唆された.要因として,当院では神経心理学的検査・ドライブシミュレータの院内基準をクリアした運転支援者1人に対して,実車件数が1.1 回であり,退院前に1 回以上は実際に路上で運転出来ていることが挙げられる.その他にも, 神経心理学的検査やドライブシミュレータを並行して行うことで,運転再開の可否を高い精度で判断出来ていると考える.しかし,自宅復帰後の運転に対し操作の困難さや恐怖感を感じている患者が4割強と少なくない.自動車の運転は,高度で複合的な作業のため,軽度の機能障害でも恐怖や困難さを感じるのではと考えた.ただ,脳血管障害を発症後の運転では,恐怖や困難さを自覚する事も安全に運転する上では重要だと考えている.今後の課題として,調査人数に関して,再開者の6 割程度しか調査出来て無い事が挙げられる.原因として,最初は回復期病棟のみで運転支援を行っていたが,現在は,地域包括・外来など他病棟でも支援が行われており,運転支援に対してスタッフの習熟度に差がある事が挙げられる.今後は,各病棟への教育を強化し,追跡調査も含めスムーズな支援が行えるように体制を作っていく.【まとめ】今回,運転再開した全患者の運転状況を把握出来ている訳では無いが,脳血管疾患患者でも適切に運転能力評価および指導を行うことで,安全に社会復帰出来る可能性が示唆された.今後も支援状況により,実車回数・コースの再考・評価方法等を検討していく必要があると考えている.【倫理的配慮,説明と同意】本研究の計画立案に際し,事前に所属施設の倫理審査員会の承認を得た(承認番号2019-06).
ISSN:2434-3889
DOI:10.32298/kyushupt.2021.0_139