大分県杵築市で実施している住民主体型介護予防教室参加者の身体機能の変化について O-187 スポーツ・健康

【はじめに】 大分県杵築市は、2018年度より、運動の場の提供、社会参加機会の確保を目的とした、住民主体型介護予防教室「週一通いの場」(以下、「通いの場」)の取り組みを開始した。「通いの場」は、(1)週に1回以上、公民館等の開催場所に集合すること、(2)杵築市から依頼された理学療法士が新たに開発した「きつみん体操」を「通いの場」で実施すること、(3)3ヶ月以上継続すること、の3点を運営の条件としている。また、「通いの場」参加者のうち希望者には定期的な体力測定と結果のフィードバックを実施している。今回、「通いの場」参加者の体力測定の結果を縦断的に解析し、その特徴を検討した。本研究で結果を省察する...

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Published in九州理学療法士学術大会誌 p. 187
Main Authors 手老, 泰介, 永徳, 研二, 森永, 琴美, 朝井, 政治, 三輪, 優芽, 河野, 礼治, 田中, 健一朗
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会 2023
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ISSN2434-3889
DOI10.32298/kyushupt.2023.0_187

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Summary:【はじめに】 大分県杵築市は、2018年度より、運動の場の提供、社会参加機会の確保を目的とした、住民主体型介護予防教室「週一通いの場」(以下、「通いの場」)の取り組みを開始した。「通いの場」は、(1)週に1回以上、公民館等の開催場所に集合すること、(2)杵築市から依頼された理学療法士が新たに開発した「きつみん体操」を「通いの場」で実施すること、(3)3ヶ月以上継続すること、の3点を運営の条件としている。また、「通いの場」参加者のうち希望者には定期的な体力測定と結果のフィードバックを実施している。今回、「通いの場」参加者の体力測定の結果を縦断的に解析し、その特徴を検討した。本研究で結果を省察することによって、今後の「通いの場」をより有意義なものにできると考えている。【方法】 対象は、2018年12月から2021年10月の期間に「通いの場」への参加を開始し、1年以上継続して参加した女性住民とした。方法は、測定および解析を希望した住民の体力測定の結果について解析を行った。解析項目は、教室参加開始時(以下、参加時)、3ヶ月経過後(以下、3ヶ月後)、1年経過後(以下、1年後)の身長、体重、身体指数:BMI、握力、開眼片脚立位保持時間:OLS、Timed Up and Go Test:TUGとした。解析は、正規性を確認した後に、反復測定分散分析、および多重比較法を実施した。解析はIBM社製SPSS(Ver. 21)にて実施し、有意水準を5%とした。体力測定の結果および個人情報の取り扱いについては、杵築市個人情報保護条例に基づき杵築市職員が管理している匿名化されたデータを受領し、解析を実施した。本研究は、大分大学福祉健康科学部倫理委員会の承認を得て実施した(承認番号:F18011)。【結果】 解析対象となったのは、94名(76.9±6.2歳)であった。身体機能の結果は、参加時、3ヶ月後、1年後の順で、握力が、22.4±5.3 ㎏、22.0±5.2 ㎏、22.3±4.2 ㎏、OLGは43.1±40.7秒、52.0±42.1秒、44.2±38.3秒、TUGは7.7秒±2.0、6.8±1.9秒、7.1±2.2秒であった。TUGのみ改善傾向を示した。【考察】 これまでに報告のある「週一通いの場」の効果について、廣らは、5m間最大歩行速度、TUG、5回椅子立ち上がり時間、握力の改善を報告している。本研究のTUGの結果も、時間の短縮を認めており、住民主体型介護予防教室に継続して参加することで一定の効果が期待できると考えた。一方、握力やOLGでは変化を認めなかった。これは、杵築市での「通いの場」の運動は住民主体で運営されており、頻度や「きつみん体操」の実施以外の運動内容については、住民に一任されていること、「きつみん体操」の内容は、筋力やバランス能力向上の要素を含む二重課題の運動構成となっているが、「通いの場」には様々な参加者が参加していることもあり、参加者によっては強度や頻度が十分ではないことなどが影響していると考えられた。現状では、測定結果のフィードバックとあわせて、運動指導が行われてはいるものの、実際の運動に反映されているかは確認できていない。「通いの場」によって、さらに体力の向上を求める際には、住民への運動指導だけなく、個々に応じた強度の設定や運動を日常生活に取り入れるなどの工夫も必要になると思われた。【まとめ】 住民主体型介護予防教室にて、身体機能の向上を図るためには、専門職による運動指導等の介入が必要と考える。また、介護予防教室以外での運動機会の確保も検討する必要がある。
ISSN:2434-3889
DOI:10.32298/kyushupt.2023.0_187