ヒンドゥー教徒相続(改正)法とインド女性の教育 「全国家族健康調査」を利用して

本稿は、1970年代から1990年代のインドにおける、1956年ヒンドゥー教徒相続法の州別改正・新法制定と女性の教育水準との関係を検証している。改正により女性に不動産など合同家族財産の相続権が与えられ、性別における不平等が是正されたことで、物的資本や人的資本に関する「相続」の枠組みが変化したと考えられる。本稿では、女性の教育水準の向上を人的資本投資の増加と捉えたうえで、相続法改正と教育水準にいかなる関係が存在するのかを4 期間の全国家族健康調査データにより検証した。分析では、改正州の土地所有世帯に居住しているヒンドゥー教徒の世帯主の娘は、そうでない女性と比較すると有意に教育年数が長く、新聞・雑...

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Published in南アジア研究 Vol. 2019; no. 31; pp. 47 - 85
Main Author 山本, 明日香
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本南アジア学会 31.03.2021
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ISSN0915-5643
2185-2146
DOI10.11384/jjasas.2019.47

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Summary:本稿は、1970年代から1990年代のインドにおける、1956年ヒンドゥー教徒相続法の州別改正・新法制定と女性の教育水準との関係を検証している。改正により女性に不動産など合同家族財産の相続権が与えられ、性別における不平等が是正されたことで、物的資本や人的資本に関する「相続」の枠組みが変化したと考えられる。本稿では、女性の教育水準の向上を人的資本投資の増加と捉えたうえで、相続法改正と教育水準にいかなる関係が存在するのかを4 期間の全国家族健康調査データにより検証した。分析では、改正州の土地所有世帯に居住しているヒンドゥー教徒の世帯主の娘は、そうでない女性と比較すると有意に教育年数が長く、新聞・雑誌を読む習慣があるという先行研究を拡張する結果が得られた。ヒンドゥー教徒相続法の対象外であるイスラーム教徒やキリスト教徒のデータを活用して、宗教以外の条件が同じプラセボを作成し、結果の頑健性の確認に使用したが、有意な教育水準の向上は認められなかった。
ISSN:0915-5643
2185-2146
DOI:10.11384/jjasas.2019.47