気象研究所大気大循環モデルによる対流圏循環のシミユレーシヨン 第I部1月の状態の再現実験

気象研究所大気大循環モデル(MRI•GCM)による1月の対流圏循環の再現実験を行なった。MRI•GCMはUCLA•GCM(Arakawa and Mintz, 1974; Arakawa and Lamb, 1977)を基にし,力学及び物理過程の両面で若干の修正,改良を行なっている。モデルの格子間隔は東西5度,南北4度である。モデルの上端は100mbにあり,大気は5層に分割している。海面水温,海氷の分布は気候値を与えている。他の変数はモデルによる予報又は診断によって決定している。 モデルは大循環の基本的特徴を再現している。特に熱帯域は良く再現できている。但し大気下層の水蒸気量が気候値より過少に...

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Published in気象集誌. 第2輯 Vol. 63; no. 5; pp. 749 - 778
Main Authors 鬼頭, 昭雄, 山崎, 孝治, 時岡, 達志, 谷貝, 勇
Format Journal Article
LanguageEnglish
Japanese
Published 公益社団法人 日本気象学会 1985
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ISSN0026-1165
2186-9057
DOI10.2151/jmsj1965.63.5_749

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Summary:気象研究所大気大循環モデル(MRI•GCM)による1月の対流圏循環の再現実験を行なった。MRI•GCMはUCLA•GCM(Arakawa and Mintz, 1974; Arakawa and Lamb, 1977)を基にし,力学及び物理過程の両面で若干の修正,改良を行なっている。モデルの格子間隔は東西5度,南北4度である。モデルの上端は100mbにあり,大気は5層に分割している。海面水温,海氷の分布は気候値を与えている。他の変数はモデルによる予報又は診断によって決定している。 モデルは大循環の基本的特徴を再現している。特に熱帯域は良く再現できている。但し大気下層の水蒸気量が気候値より過少になっている。南半球もほぼ良く再現できている。これに反して北半球ではいくつかの不一致がみられる。その一つがチベット高原(ここでは中国東北部及びシベリア南東部の地形も含めたものを指す)の近傍の流れである。モデルでは中国東部域の大気下層で北風成分が強過ぎる。又チベット高原南部域では東風成分が強過ぎる。すなわち高気圧性の流れが強すぎる。この流れは冷たくて乾燥しており,ベンガル湾上で蒸発が過剰になっており,更に下流のインド洋赤道近傍で雨量が多過ぎる。この原因の一つとして,寒気の侵入を阻みやすい小さな地形の効果がモデルには不足していることが考えられる。 他の不充分な点としてアリューシャン低気圧が北東方向にずれ,その示度が深まり過ぎる点が挙げられる。この点に関しても小さな地形の効果が不足していることが考えられる。同時に事実関係としてモデル上部の極域で気温が低下しており,アラスカからカナダ北西部にかけて安定度が悪くなっていることが指摘される。 モデルではArakawa and Schubert(1974)の理論に基づく積雲対流のパラメタリゼーションを行なっている。この積雲モデルは低緯度域で組織的な降雨をもたらす。熱と運動量収支の点でこの積雲モデルが果たしている役割についても示す。
ISSN:0026-1165
2186-9057
DOI:10.2151/jmsj1965.63.5_749