硫化水素気化分離/同位体希釈/誘導結合プラズマ質量分析法による鋼中の微量硫黄の定量

硫化水素気化分離/同位体希釈/ICP-MSによる鋼中の微量硫黄の定量法を確立した.試料溶液の蒸留によって発生した硫化水素を捕集し,その硫化水素ガスをICP-MS装置に導入する方法を適用した.硫化水素の蒸留時間を決めるために,蒸留温度,Arキャリヤーガス流量の影響を調査したところ,各々250℃,100ml min-1に設定した場合,約20分間の蒸留時間で硫黄はほぼ完全に回収できることを確認した.ICP-MSにおいて,32S+と34S+の強度比及び各強度に対する,ネブライザーガス流量,rfパワー,試料ガス流量の影響を調べたところ,各々0.88 l min-1,1350 W, 30ml min-1に...

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Published in分析化学 Vol. 47; no. 4; pp. 203 - 209
Main Authors 中, 啓人, 蔵保, 浩文, 馬, 利, 中原, 武利
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本分析化学会 05.04.1998
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Summary:硫化水素気化分離/同位体希釈/ICP-MSによる鋼中の微量硫黄の定量法を確立した.試料溶液の蒸留によって発生した硫化水素を捕集し,その硫化水素ガスをICP-MS装置に導入する方法を適用した.硫化水素の蒸留時間を決めるために,蒸留温度,Arキャリヤーガス流量の影響を調査したところ,各々250℃,100ml min-1に設定した場合,約20分間の蒸留時間で硫黄はほぼ完全に回収できることを確認した.ICP-MSにおいて,32S+と34S+の強度比及び各強度に対する,ネブライザーガス流量,rfパワー,試料ガス流量の影響を調べたところ,各々0.88 l min-1,1350 W, 30ml min-1に設定した場合,32S+と34S+の強度比がほぼ一定となり,32S+,34S+におけるバックグラウンド強度はより小さくなることを確認した.確立した定量法の検出限界(3σ)は0.2μgg-1であり,日本鉄鋼協会認証の鉄鋼標準試料や実際の高純度鉄中の硫黄の定量に適用したところ,得られた定量値は,鋼中2μg g-1レベルの硫黄に対して,RSD=2.6%の精度で定量できることを確認した.
ISSN:0525-1931
DOI:10.2116/bunsekikagaku.47.203