ENSO(エル•ニーニョ/南方振動)の全球構造 第2部:ENSOサイクルに伴う変化

第1部で記述されたデータにより,ENSO サイクルに伴う海面水温及び大気構造の全球的な変化を解析し,以下のような結果が得られた。 1)熱帯および南半球亜熱帯では,地上気圧と大気循環のアノマリーに,インド洋上に出現し,東部太平洋上へと伝播する東進の位相が顕著である。 2)インド洋上に出現するこれらのアノマリーは,反対エル•ニーニョ期からエル•ニーニョ期(又はその逆)に移行する中間段階に,ユーラシア大陸上に現われるアノマリーと深い関連がある。ユーラシア大陸上でのアノマリーは,とくに下部対流圏で傾圧的な鉛直構造を示し,積雪分布のアノマリーとも対応していることから,インド洋方面への大規模な寒気吹き出し...

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Published in気象集誌. 第2輯 Vol. 65; no. 1; pp. 81 - 102
Main Author 安成, 哲三
Format Journal Article
LanguageEnglish
Japanese
Published 公益社団法人 日本気象学会 1987
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ISSN0026-1165
2186-9057
DOI10.2151/jmsj1965.65.1_81

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Summary:第1部で記述されたデータにより,ENSO サイクルに伴う海面水温及び大気構造の全球的な変化を解析し,以下のような結果が得られた。 1)熱帯および南半球亜熱帯では,地上気圧と大気循環のアノマリーに,インド洋上に出現し,東部太平洋上へと伝播する東進の位相が顕著である。 2)インド洋上に出現するこれらのアノマリーは,反対エル•ニーニョ期からエル•ニーニョ期(又はその逆)に移行する中間段階に,ユーラシア大陸上に現われるアノマリーと深い関連がある。ユーラシア大陸上でのアノマリーは,とくに下部対流圏で傾圧的な鉛直構造を示し,積雪分布のアノマリーとも対応していることから,インド洋方面への大規模な寒気吹き出しの強化(又は弱化)と対応していることが示唆される。 3)ユーラシア大陸上の大気循環のアノマリーと北太平洋上のアノマリーとの間に,時間のズレを持ったテレコネクションが認められる。このテレコネクションは ENSO サイクルにおいて,重要な役割を果していると推測される。 以上の結果は,ENSO を全球的な大陸(雪氷)一大気一海洋相互作用として把えるべきことを示唆している。
ISSN:0026-1165
2186-9057
DOI:10.2151/jmsj1965.65.1_81