第四級アンモニウム塩を用いた高分子支持膜型塩化物イオン電極に対する透析患者血清中妨害物質の検討

メチルトリドデシルアンモニウム塩を感応物質とする塩化物イオン電極で種々の患者血清を測定したときの特定試料に対する応答挙動に注日し,その現象と原因について検討した.実試料測定の来歴がある上記電極で透析患者血清を測定すると,標準溶液や非透析患者血清を測定したときに比べて応答が遅く,しかもその測定値は実用基準法の電量滴定法で求めた測定値よりも10~58mmol/lほど高い値であった.電極を管理血清に浸漬した前後で選択性を調べたところ,浸漬後は特に安息香酸やチオシアン酸イオンに対する選択性が大幅に低下した.この結果から,電極が透析患者血清中に含まれる有機酸や親油性陰イオンに対して応答しやすくなったこと...

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Published in分析化学 Vol. 42; no. 5; pp. 265 - 271
Main Authors 宮城, 宏行, 高田, 芳矩, 柴田, 康久, 広田, 邦男
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本分析化学会 05.05.1993
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ISSN0525-1931
DOI10.2116/bunsekikagaku.42.5_265

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Summary:メチルトリドデシルアンモニウム塩を感応物質とする塩化物イオン電極で種々の患者血清を測定したときの特定試料に対する応答挙動に注日し,その現象と原因について検討した.実試料測定の来歴がある上記電極で透析患者血清を測定すると,標準溶液や非透析患者血清を測定したときに比べて応答が遅く,しかもその測定値は実用基準法の電量滴定法で求めた測定値よりも10~58mmol/lほど高い値であった.電極を管理血清に浸漬した前後で選択性を調べたところ,浸漬後は特に安息香酸やチオシアン酸イオンに対する選択性が大幅に低下した.この結果から,電極が透析患者血清中に含まれる有機酸や親油性陰イオンに対して応答しやすくなったことが妨害の一因と考えられた.ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で透析患者血清を分離検出したところ,非透析患者の血清にはない特有の成分が少なくとも5成分以上含まれていることが分かった.これらの成分中の塩化物イオン電極に妨害を与える物質は電極表面を透析膜(分画分子量:1000)で被覆することにより排除できたので,その分子量は1000以上と推定された.
ISSN:0525-1931
DOI:10.2116/bunsekikagaku.42.5_265