中学・高校時代の運動習慣が成人後の運動習慣に及ぼす遺伝的影響 行動遺伝学モデルによる2変数遺伝/環境要因の解析
中学・高校時代の運動習慣と、成人後の運動習慣に関わる遺伝要因を明らかにし、両者の遺伝学的な関係を明らかにする目的で行動遺伝学的解析を行った。 対象は東京大学附属中高等学校を卒業した双生児である。2000年前半に「生活習慣等についての質問紙調査」を実施した。ご協力を承諾して下さった双生児およびその家族の方々から回答を得た。この中から、現在 (成人後) の運動習慣、中学・高校時代の運動習慣に対する回答を分析に用いた。回答は、1. よく運動をする (した)、2. 普通に運動する (した)、3. (あまり) 運動しない (しなかった) の中から1つを選択する。ペアで回答を得たものは174組であり、一卵...
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Published in | 行動医学研究 Vol. 8; no. 1; pp. 23 - 30 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本行動医学会
2002
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Subjects | |
Online Access | Get full text |
ISSN | 1341-6790 2188-0085 |
DOI | 10.11331/jjbm.8.23 |
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Summary: | 中学・高校時代の運動習慣と、成人後の運動習慣に関わる遺伝要因を明らかにし、両者の遺伝学的な関係を明らかにする目的で行動遺伝学的解析を行った。 対象は東京大学附属中高等学校を卒業した双生児である。2000年前半に「生活習慣等についての質問紙調査」を実施した。ご協力を承諾して下さった双生児およびその家族の方々から回答を得た。この中から、現在 (成人後) の運動習慣、中学・高校時代の運動習慣に対する回答を分析に用いた。回答は、1. よく運動をする (した)、2. 普通に運動する (した)、3. (あまり) 運動しない (しなかった) の中から1つを選択する。ペアで回答を得たものは174組であり、一卵性双生児145組、同性二卵性双生児14組を分析対象にした。男子の平均年齢は45.1歳、女子の平均年齢は40.7歳である。 双生児両児のPolychoric相関係数行列をもとに共分散構造分析を実施した。解析には汎用ソフトPRELIS2、LISREL7、LISREL8を用いた。2変数遺伝モデルとしてはCorrelated Factors ModelおよびCholesky Decomposition Modelを用いた。 解析の結果、相加的遺伝要因と非共有環境要因を含むAEモデルが適合した。得られた結果より、以下の結論を得た。中学・高校時代の運動習慣は成人後の運動習慣よりも遺伝規定性が強い。いずれも関与する遺伝要因は相加的である。そして、一部には両方に共通に関与する遺伝要因が存在する。その遺伝相関は0.44である。34%が中学・高校時代から継続する遺伝要因であり、66%は成人後新規に関与する遺伝要因である。環境要因に関しては、成人後の運動習慣で環境要因の寄与が強くなる。主として関与するのは個人に特異的な非共有環境要因である。また、中学・高校時代と成人後とに共通に関与する非共有環境要因はほとんどない。今回得られた結果は平均的な成人後の運動習慣と考える事が出来る。 生活習慣病の予防・治療との関係で運動習慣を考えた場合に、成人後の運動習慣に環境要因の関与が大きいと言う事は、環境要因を考慮して運動習慣を改善する事が有効である事を行動遺伝学的にも支持するものである。 従来、生活習慣は環境要因に規定されたものとして検討されてきたが、今回の結果は運動習慣にも一部で遺伝要因が関与する事を示す。将来的には運動指導や健康教育にあたっても遺伝要因を念頭に入れる必要が生じると思われる。 |
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ISSN: | 1341-6790 2188-0085 |
DOI: | 10.11331/jjbm.8.23 |