溶連菌の侵入門戸に関する実験的研究 1. マウスに対する噴霧感染実験

溶連菌の侵入門戸の探索の目的でマウスに自然感染に最も近い噴霧感染を行い, 溶連菌の侵入付着部位及び組織病変について検討した.溶連菌はLancefield分類によるA群12型を用い, 108~1010 CFU/mlの生菌及びFITCラベル菌液をマウス1匹当り2mlずつ噴霧し, 噴霧後経時的に2時間から10日目までに屠殺解剖し観察した. その結果, 溶連菌培養では, 咽頭で噴霧後3日目, 肺では噴霧後24時間以内で陽性であった.その他の臓器では陰性であり, 致死例は認めなかった.組織学的には, 光顕で口腔・咽頭粘膜での菌の付着が3日以内には証明され, FITCラベル菌でも24時間以内では証明された...

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Published in感染症学雑誌 Vol. 57; no. 10; pp. 882 - 889
Main Authors 鉾之原, 昌, 馬場, 泰光, 吉永, 正夫, 川上, 清, 井上, 博之, 地頭所, 保, 寺脇, 保
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本感染症学会 20.10.1983
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Summary:溶連菌の侵入門戸の探索の目的でマウスに自然感染に最も近い噴霧感染を行い, 溶連菌の侵入付着部位及び組織病変について検討した.溶連菌はLancefield分類によるA群12型を用い, 108~1010 CFU/mlの生菌及びFITCラベル菌液をマウス1匹当り2mlずつ噴霧し, 噴霧後経時的に2時間から10日目までに屠殺解剖し観察した. その結果, 溶連菌培養では, 咽頭で噴霧後3日目, 肺では噴霧後24時間以内で陽性であった.その他の臓器では陰性であり, 致死例は認めなかった.組織学的には, 光顕で口腔・咽頭粘膜での菌の付着が3日以内には証明され, FITCラベル菌でも24時間以内では証明された.また喉頭・気管は走査電顕で観察し, 24時間以内の気管で線毛細胞の乱れや線毛の脱落がみられた. 肺では, 生菌及びFITCラベル菌ともに, 気管支内や肺胞周囲に菌及び菌を貧食した細胞が噴霧後3日目までは多数みられた. しかし, 化膿巣は見出せなかった. 以上の結果から溶連菌噴霧により, 口腔・咽頭粘膜では菌の付着は容易に起るが, 喉頭・気管では, 線毛細胞や粘液による清浄作用により菌の付着や侵入は起りにくく, 気管支・肺では多数の貧食細胞により速やかに貧食されたと考えられる. このことから気道の粘膜上皮によって溶連菌に対する親和性や防禦能の差があることが示唆された.
ISSN:0387-5911
1884-569X
DOI:10.11150/kansenshogakuzasshi1970.57.882