慢性の経過をたどった咀嚼筋間隙膿瘍症例

咀嚼筋間隙膿瘍の文献的報告は少なく, 発症病態の詳細はあまり知られていない. 著明な炎症所見を欠き5年の経過をたどった咀嚼筋間隙膿瘍症例に対して経上顎洞的に膿瘍腔を開放した. 画像上は腫瘍性病変に類似していた. 下顎臼歯部歯周炎から下顎骨硬化性骨髄炎を生じ, 炎症がさらに咬筋, 内・外側翼突筋, 側頭筋に沿って波及したことによって, 咬筋上部と側頭筋下部レベルの咀嚼筋間隙で膿瘍形成した病態と推察される. 文献的には本症の臨床像は多彩である. 各咀嚼筋への炎症波及様式の相違や隣接する間隙への炎症波及の有無, 慢性に経過する下顎骨骨髄炎の存在等が反映されるためと考えられる. CT, MRIによる病...

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Published in日本耳鼻咽喉科学会会報 Vol. 104; no. 12; pp. 1143 - 1146
Main Authors 平木, 信明, 藤吉, 達也, 吉田, 雅文, 宇高, 毅, 清水, 隆, 牧嶋, 和見
Format Journal Article
LanguageEnglish
Japanese
Published 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会 20.12.2001
日本耳鼻咽喉科学会
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ISSN0030-6622
1883-0854
DOI10.3950/jibiinkoka.104.1143

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Summary:咀嚼筋間隙膿瘍の文献的報告は少なく, 発症病態の詳細はあまり知られていない. 著明な炎症所見を欠き5年の経過をたどった咀嚼筋間隙膿瘍症例に対して経上顎洞的に膿瘍腔を開放した. 画像上は腫瘍性病変に類似していた. 下顎臼歯部歯周炎から下顎骨硬化性骨髄炎を生じ, 炎症がさらに咬筋, 内・外側翼突筋, 側頭筋に沿って波及したことによって, 咬筋上部と側頭筋下部レベルの咀嚼筋間隙で膿瘍形成した病態と推察される. 文献的には本症の臨床像は多彩である. 各咀嚼筋への炎症波及様式の相違や隣接する間隙への炎症波及の有無, 慢性に経過する下顎骨骨髄炎の存在等が反映されるためと考えられる. CT, MRIによる病巣の評価のみならず, 下顎歯病変, 各咀嚼筋の炎症性肥厚所見, 下顎骨骨髄腔の消失やテクネシウム集積で示される骨髄炎の存在に着目することが, 本症の病態把握に重要である.
ISSN:0030-6622
1883-0854
DOI:10.3950/jibiinkoka.104.1143