熱傷創感染症に対するpazufloxacin注射薬の臨床的検討および組織移行性の検討
新規注射用キノロン系抗菌薬pazufloxacin mesilate (PZFX注射薬) の熱傷創感染症を対象とした臨床第III相試験を北海道大学医学部形成外科ならびに関連施設の計6施設において実施し, その有効性, 安全性および有用性を検討した。総投与例10例のうち, 除外基準に抵触した不採用症例1例を除く, 9例を解析対象とし, 以下の成績を得た。なお, PZFX注射薬の1日投与量は, 1回300mg1日2回投与が1例, 1回500mg 1日2回投与が8例であった。 1) 臨床効果については解析対象9例中, 著効5例, 有効3例, やや有効1例で, 著効と有効をあわせた有効率は8/9であっ...
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Published in | 日本化学療法学会雑誌 Vol. 48; no. 6; pp. 401 - 416 |
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Main Authors | , , , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
公益社団法人 日本化学療法学会
25.06.2000
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Subjects | |
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ISSN | 1340-7007 1884-5886 |
DOI | 10.11250/chemotherapy1995.48.401 |
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Summary: | 新規注射用キノロン系抗菌薬pazufloxacin mesilate (PZFX注射薬) の熱傷創感染症を対象とした臨床第III相試験を北海道大学医学部形成外科ならびに関連施設の計6施設において実施し, その有効性, 安全性および有用性を検討した。総投与例10例のうち, 除外基準に抵触した不採用症例1例を除く, 9例を解析対象とし, 以下の成績を得た。なお, PZFX注射薬の1日投与量は, 1回300mg1日2回投与が1例, 1回500mg 1日2回投与が8例であった。 1) 臨床効果については解析対象9例中, 著効5例, 有効3例, やや有効1例で, 著効と有効をあわせた有効率は8/9であった。また, 1日投与量別の有効率は, 1回300mg×2回/日で1/1,500mg×2回/日で7/8であった。 2) 細菌学的効果については, 菌陰性化率が単独菌感染ではグラム陽性菌で0/1, グラム陰性菌で1/4, 複数菌感染では1/1, 全体では2/6であった。分離菌別では, Enterococcus faecalis 1株, Enterobacter cloacae1株, Acinetobacter calcoaceticus 1株は消失したもののStaphzylocons aureus (MSSA) 1株Pseudomonas aeruginosa 3株は存続した。 3) 副作用は解析対象9例の全例で認められず, 臨床検査値異常は解析対象9例中2例に認められ, ALTおよびAl-Pの上昇が1例, 尿蛋白の異常が1例であった。 また, 熱傷皮膚組織へのPZFXの移行性を北海道大学医学部形成外科ならびに関連施設の計4施設にて検討し, 以下の成績を得た。なお, 組織移行が検討できたのは, 臨床試験検討例のうち5例であった。 1) eschar (熱 (壊) 死組織) へのPZFX移行に関しては, escharが採取できた500mg投与4例で, 点滴終了1時間後において, 1.33~7.54μg/gの移行が認められた。 2) subeschar (熱 (壊) 死組織の下の融解している組織) では, 点滴終了1時間後において, 300mg投与1例で1.68μg/g, 500mg投与4例で2.12~8.44μg/gの移行が認められた。 3) 500mg投与4例では, 点滴終了1時間後の平均組織内PZFX濃度はescharで4.56±2.35μg/g (mean±S.D.), subescharで4.78±2.60μg/g (mean±S.D.) であり, eschar, subescharへ同程度の移行がみられた。 4) 副作用は解析対象5例全例で認められず, 臨床検査値異常も解析対象4例全例で認められなかった。 以上の臨床効果および熱傷組織への移行の成績から, 本薬は熱傷創感染症の治療において, 有用性の高い薬剤であることが示唆された。 |
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ISSN: | 1340-7007 1884-5886 |
DOI: | 10.11250/chemotherapy1995.48.401 |