製造業における騒音曝露作業者の耳音響放射 (OAE) に関する現場調査

「抄録」: 製造業における騒音曝露作業者の耳音響放射(OAE)に関する現場調査: 加部勇ほか. 古河電気工業株式会社 - 「目的」: 国内では一般の産業現場において耳音響放射検査(OAEs)は普及しておらず, 実際の騒音職場での使用報告がほとんどない. 本調査は, 国内製造業の事業場で, 騒音に曝露する作業者を対象にOAEsと最小可聴閾値(HTs)との関連を検討した. 「対象と方法」: 金属製品製造業の2事業場において騒音職場の作業者(曝露群) 34名(平均年齢40.6±9.4歳)と, 非騒音曝露作業者(コントロール群) 9名(49.0±14.3歳)を調査対象とした. 対象者毎に作業環境測定(...

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Published in産業衛生学雑誌 Vol. 57; no. 6; pp. 306 - 313
Main Authors 加部勇, 古賀安夫, 幸地勇, 宮内博幸, 蓑添葵, 桑田大介, 堤いづみ, 中川雅文, 田中茂
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本産業衛生学会 20.11.2015
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Summary:「抄録」: 製造業における騒音曝露作業者の耳音響放射(OAE)に関する現場調査: 加部勇ほか. 古河電気工業株式会社 - 「目的」: 国内では一般の産業現場において耳音響放射検査(OAEs)は普及しておらず, 実際の騒音職場での使用報告がほとんどない. 本調査は, 国内製造業の事業場で, 騒音に曝露する作業者を対象にOAEsと最小可聴閾値(HTs)との関連を検討した. 「対象と方法」: 金属製品製造業の2事業場において騒音職場の作業者(曝露群) 34名(平均年齢40.6±9.4歳)と, 非騒音曝露作業者(コントロール群) 9名(49.0±14.3歳)を調査対象とした. 対象者毎に作業環境測定(ENM)と, 騒音個人曝露測定(PNM)を同時期に実施した. 騒音曝露による聴覚影響の評価指標として, 作業開始前後の0.5kHz, 1kHz, 2kHz, 4kHzと8kHzのHTsおよび2kHz, 3kHzと4kHzの歪成分耳音響放射検査(DPOAEs)を行った. HTs, OAEs, ENMとPNMの結果の曝露群と非曝露群の比較, 作業前後の比較, NIHL有無の比較は, Student's t検定を用いた. HTs, OAEs, ENMとPNMの結果の関連についてPearson相関係数を求めた. 「結果」: ENMおよびPNMは, 騒音曝露群がA測定(LAeq) 84.5±4.1 dB (A), B測定(LAMAX) 89.5±6.3 dB (A), 時間加重平均(LTWA) 83.4±4.7 dB (A), 一秒率(LAE) 153.1±15.7 dB (A), コントロール群がLAeq 53.2±2.6 dB (A), LAMAX 56.4±2.4 dB (A), LTWA 67.8±5.6 dB (A), LAE 119.5±5.6 dB (A)となり, 騒音曝露レベルは曝露群が有意に高かった. 作業前後のHTs, OAEsは, 両群とも差は無かった. 両群とも騒音曝露レベルのLAeq, LAMAX, LTWA, LAEとその影響指標であるHTs, OAEsに相関がみられなかったが, HTsとOAEsとの間には相関をみとめた. NIHLをみとめた群は, NIHLのない群に比べて, HTsおよびOAEsが有意に低下していた. 「結論」: 作業前後のHTsとOAEsの相関をみとめた. 今後, 日本の産業現場でも騒音性難聴のスクリーニング検査や騒音曝露作業者の聴力管理としてOAEが用いられることが期待される.
ISSN:1341-0725