柔道審判員における脳振盪への対応経験と知識・意識の実態調査

〔要旨〕 脳振盪発生頻度の高い柔道競技では, 試合中に脳振盪が発生した場合の迅速な救護対応に繋げるために, 審判員が試合を止める的確な初期判断をする必要がある. 本研究は, 柔道審判員における脳振盪への対応経験と知識・意識の実態を明らかにすることを目的とした. 対象者は, 全日本柔道連盟公認審判員資格保持者94名(A級30名, B級34名, C級30名)であった. 試合中に脳振盪が起きた場面を対応した経験を有する審判員は全体の54.3%であり, 柔道審判員は, 試合中に脳振盪が発生する場面を対応する可能性が高いことが示された. しかし, 脳振盪に関する講習会を受けた経験を有する者は85.1%で...

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Published in日本臨床スポーツ医学会誌 Vol. 30; no. 2; pp. 475 - 483
Main Authors 森田秀一, 山本利春, 笠原政志, 前川直也
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床スポーツ医学会 30.04.2022
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ISSN1346-4159

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Summary:〔要旨〕 脳振盪発生頻度の高い柔道競技では, 試合中に脳振盪が発生した場合の迅速な救護対応に繋げるために, 審判員が試合を止める的確な初期判断をする必要がある. 本研究は, 柔道審判員における脳振盪への対応経験と知識・意識の実態を明らかにすることを目的とした. 対象者は, 全日本柔道連盟公認審判員資格保持者94名(A級30名, B級34名, C級30名)であった. 試合中に脳振盪が起きた場面を対応した経験を有する審判員は全体の54.3%であり, 柔道審判員は, 試合中に脳振盪が発生する場面を対応する可能性が高いことが示された. しかし, 脳振盪に関する講習会を受けた経験を有する者は85.1%であり, 全ての審判員に周知されてはいなかった. さらに, 脳振盪に関する知識の平均スコアは15.3±3.0点(最大19点)であり, 各知識項目の正答率が90%を下回った項目は, 19項目中9項目であったことから, 脳振盪に関する知識は十分ではないことが示された. これらのことから, 柔道審判員は, 試合中に脳振盪が起こる場面を対応する可能性が高いが, 多くの審判員がそれに必要な知識・意識を十分持ち合わせているわけではないことが明らかとなった.
ISSN:1346-4159