日本の大正期から第二次世界大戦終戦までにおける精神科看護に関する文献検討

「要旨」大正期から第二次世界大戦後における日本の精神科看護について知見を得るために文献検討を行った. 文献検索で収集した7文献を質的記述的に分析した結果, この時期の精神科看護の特徴として〔資格制度〕〔戦争・震災〕〔精神病院法〕〔職業としての看護人〕〔患者虐待事件〕の5カテゴリが生成された. 大正期に看護婦資格制度ができた. しかし, その教育内容に精神科看護学の規定はなく, 精神病院では看護人養成講習において独自で精神看護学を教育していた. 看護人養成講習を実施する精神病院は少ない上に卒業者も少なかった. 大正期に精神科病院法が施行された. その際に公立精神病院の設立は少なく, 私立精神病院...

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Published in大和大学研究紀要 保健医療学部編 Vol. 11; pp. 17 - 28
Main Author 夫博美
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 大和大学 14.03.2025
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ISSN2432-5597

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Summary:「要旨」大正期から第二次世界大戦後における日本の精神科看護について知見を得るために文献検討を行った. 文献検索で収集した7文献を質的記述的に分析した結果, この時期の精神科看護の特徴として〔資格制度〕〔戦争・震災〕〔精神病院法〕〔職業としての看護人〕〔患者虐待事件〕の5カテゴリが生成された. 大正期に看護婦資格制度ができた. しかし, その教育内容に精神科看護学の規定はなく, 精神病院では看護人養成講習において独自で精神看護学を教育していた. 看護人養成講習を実施する精神病院は少ない上に卒業者も少なかった. 大正期に精神科病院法が施行された. その際に公立精神病院の設立は少なく, 私立精神病院が多く設立された. 第二次世界大戦が開戦すると看護人は出征などによって減少したため満足な医療・看護ができなくなった. その上, 食糧難が要因で多くの患者たちが栄養障害によって死亡した. 精神病院の看護人は社会的地位が低く, 冷遇であった. その中で看護人は弾圧を受けながら労働争議を起こし, 待遇の一部は改善した. これらのことから, 社会情勢は精神科看護に影響を与えていた. 一方, 精神病院における患者虐待事件はどの時代であっても連綿と存在していたことが明らかになった.
ISSN:2432-5597