前立腺粘液腺癌に対してタキサン系抗がん剤が有効であった1例
抄録: 症例は68歳, 男性. 近医で腎後性腎不全と診断され, Prostate Specific Antigen (PSA)は正常範囲内であったが, 前立腺が辺縁不整かつ石様硬であったため, 精査加療目的で紹介となった. 腫瘍マーカーを測定したところ, PSAは0.068ng/mlと低値, Carcinoembryonic Antigen (CEA)は123.7ng/mlと高値であった. 病理組織学的検索のため前立腺生検を施行し, 前立腺粘液腺癌と診断した. Magnetic Resonance Imaging (MRI)検査で膀胱への浸潤を認めたが, Computed Tomography...
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Published in | 西日本泌尿器科 Vol. 86; no. 1; pp. 13 - 17 |
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Main Authors | , , , , , , , , , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
西日本泌尿器科学会
01.10.2023
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ISSN | 0029-0726 |
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Summary: | 抄録: 症例は68歳, 男性. 近医で腎後性腎不全と診断され, Prostate Specific Antigen (PSA)は正常範囲内であったが, 前立腺が辺縁不整かつ石様硬であったため, 精査加療目的で紹介となった. 腫瘍マーカーを測定したところ, PSAは0.068ng/mlと低値, Carcinoembryonic Antigen (CEA)は123.7ng/mlと高値であった. 病理組織学的検索のため前立腺生検を施行し, 前立腺粘液腺癌と診断した. Magnetic Resonance Imaging (MRI)検査で膀胱への浸潤を認めたが, Computed Tomography (CT)検査で遠隔転移がなく, cT4N0M0と診断した. 治療として開腹骨盤内臓全摘除術を施行した. 病理組織診断で膀胱壁の浸潤と著明な粘液産生を認め, 尿道断端は陽性であった. 術後はCEA正常値まで低下したが, 術後7カ月目の画像検査で左陰茎海綿体に局所再発を認めたため, 陰茎全摘除術を施行した. その後, 術後10カ月目のCT検査で多発肺転移を認め, Docetaxelの投与を開始した. 13コース施行した時点で, 食欲不振と倦怠感の副作用が出現したので休薬したが, 術後48カ月目で新規肺転移と既存病変の増大を認めたため再開した. その後はCEA上昇を認めたため, Cabazitaxelに変更し, 6カ月間は転移巣の増大を認めず, 投与を継続している. 遠隔転移を認めてから4年の経過を認めており, 前立腺粘液腺癌に対する比較的良い予後が得られた. 今回我々は, 前立腺粘液腺癌に対して, 手術およびタキサン系抗がん剤が有効であった1例を経験したので, 文献的考察を加え報告する. |
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ISSN: | 0029-0726 |