術前診断に難渋した肝副腎癒合に合併した右副腎腺腫の1例
「抄録」:肝右葉後区域と右副腎は解剖学的に近接した位置関係にあり, 剖検例の9.9%に肝副腎癒合を認めるという報告がある. 今回, 我々は術前診断に難渋した肝副腎癒合に合併した右副腎腫瘍を経験した為報告する. 症例は60歳, 女性で, 造影CTで偶発的に3.8cmの右副腎腫瘍を指摘され当科紹介となった. 当院でCT, MRIを検討した所, 副腎もしくは肝臓由来の腫瘤と考えられた. 内分泌学的精査では特記すべき異常がなかった. 131I-アドステロールシンチ検査で腫瘤に一致して強い集積を認めた為, 副腎由来の組織であることが示唆された. 画像所見で肝に入り込むように密着しているため副腎腺腫ではな...
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Published in | 西日本泌尿器科 Vol. 85; no. 2; pp. 52 - 56 |
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Main Authors | , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
西日本泌尿器科学会
01.12.2022
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ISSN | 0029-0726 |
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Summary: | 「抄録」:肝右葉後区域と右副腎は解剖学的に近接した位置関係にあり, 剖検例の9.9%に肝副腎癒合を認めるという報告がある. 今回, 我々は術前診断に難渋した肝副腎癒合に合併した右副腎腫瘍を経験した為報告する. 症例は60歳, 女性で, 造影CTで偶発的に3.8cmの右副腎腫瘍を指摘され当科紹介となった. 当院でCT, MRIを検討した所, 副腎もしくは肝臓由来の腫瘤と考えられた. 内分泌学的精査では特記すべき異常がなかった. 131I-アドステロールシンチ検査で腫瘤に一致して強い集積を認めた為, 副腎由来の組織であることが示唆された. 画像所見で肝に入り込むように密着しているため副腎腺腫ではなく肝adrenal rest tumorと診断し, 外科的摘除の方針とした. 腹腔鏡下右副腎摘除術と同時に癒合部位に対して肝部分切除術を施行し, 病理所見では腫瘍自体は肝実質内を主座としており, 腫瘍に接して正常の副腎を認め, その副腎組織は肝臓と被膜を共有していた. このことより肝副腎癒合に合併した副腎腺腫と診断した. 肝内に認められる副腎腫瘍には, 肝内に迷入した副腎組織が発育する肝adrenal rest tumorと肝外より肝組織に圧排侵入して発育する肝副腎癒合に伴う腫瘍が挙げられ, これらを含めて肝細胞癌とを術前に画像で評価することは困難である. 今回我々が経験した肝副腎癒合に伴う腫瘍に対する治療, 鑑別診断について文献的考察を加え報告する. |
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ISSN: | 0029-0726 |