セメント層板と成長線の光学顕微鏡, 走査型電子顕微鏡とマイクロラジオグラフィーによる比較観察

ヒト臼歯根尖側セメント質の成長線と層板を光学顕微鏡マイクロラジオグラフィ走査型電子顕微鏡で比較観察した。 光学顕微鏡では幅2~5μmの明調な帯状構造である成長線は, マイクロラジオグラフィーでは, 高石灰化の薄層と一致しその多くは低石灰化の薄層が伴走していた.高石灰化の薄層が不明瞭な部位では, 成長線は低石灰化層と高石灰化層の境界線と一致した。研磨片を5%次亜塩素酸ナトリウム溶液で10分間, 続いて0.5M塩酸で20秒間処理すると (次亜塩素酸一酸処理), 層板を境する幅の狭い溝が出現した。溝の多くは高石灰化の成長線に伴走する低石灰化薄層と重なった。シヤーピー雛層は, 全層にわたり溶出しやすく...

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Published in歯科基礎医学会雑誌 Vol. 34; no. 2; pp. 171 - 180
Main Authors 松尾, 朗, 矢嶋, 俊彦
Format Journal Article
LanguageEnglish
Published 歯科基礎医学会 20.04.1992
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Summary:ヒト臼歯根尖側セメント質の成長線と層板を光学顕微鏡マイクロラジオグラフィ走査型電子顕微鏡で比較観察した。 光学顕微鏡では幅2~5μmの明調な帯状構造である成長線は, マイクロラジオグラフィーでは, 高石灰化の薄層と一致しその多くは低石灰化の薄層が伴走していた.高石灰化の薄層が不明瞭な部位では, 成長線は低石灰化層と高石灰化層の境界線と一致した。研磨片を5%次亜塩素酸ナトリウム溶液で10分間, 続いて0.5M塩酸で20秒間処理すると (次亜塩素酸一酸処理), 層板を境する幅の狭い溝が出現した。溝の多くは高石灰化の成長線に伴走する低石灰化薄層と重なった。シヤーピー雛層は, 全層にわたり溶出しやすく, 成長線での溝形成は不明瞭であった。次亜塩素酸処理のみを施すと, 高石灰化の成長線に伴走する低石灰化薄層のX線吸収度が著しく低下した。 これらの観察より, セメント質の成長線は石灰化と基質構造の断層面であり, 次亜塩素酸-酸処理により形成された溝は成長線に沿った低石灰化構造に生じたことが示唆された。
ISSN:0385-0137
DOI:10.2330/joralbiosci1965.34.171