高齢者急性心筋梗塞症の初期治療とその成績 多施設共同前向き研究と自施設における検討

本邦10施設が参加した厚生省長寿科学心筋梗塞研究班による発症24時間以内の急性心筋梗塞例の検討 (JAMIES) では, 緊急冠動脈造影, 血栓溶解療法, 緊急PTCAいずれの施行率とも高齢者 (70歳以上) では若年者 (60歳未満) に比し低かった. 再疎通療法施行群の院内死亡率は非施行群に比し低かったが, この短期予後改善効果は若年者に比し高齢者ではやや小さかった. また高齢者でのPTCA成功群と再灌流療法非施行群の長期予後の比較では, 総死亡率はPTCA成功群で有意に低かった. 東京都老人医療センターにおける急性心筋梗塞の治療成績を前期高齢者 (65~74歳) と後期高齢者 (75歳以...

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Published in日本老年医学会雑誌 Vol. 37; no. 4; pp. 272 - 277
Main Authors 坂井, 誠, 今井, 保
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本老年医学会 25.04.2000
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ISSN0300-9173
DOI10.3143/geriatrics.37.272

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Summary:本邦10施設が参加した厚生省長寿科学心筋梗塞研究班による発症24時間以内の急性心筋梗塞例の検討 (JAMIES) では, 緊急冠動脈造影, 血栓溶解療法, 緊急PTCAいずれの施行率とも高齢者 (70歳以上) では若年者 (60歳未満) に比し低かった. 再疎通療法施行群の院内死亡率は非施行群に比し低かったが, この短期予後改善効果は若年者に比し高齢者ではやや小さかった. また高齢者でのPTCA成功群と再灌流療法非施行群の長期予後の比較では, 総死亡率はPTCA成功群で有意に低かった. 東京都老人医療センターにおける急性心筋梗塞の治療成績を前期高齢者 (65~74歳) と後期高齢者 (75歳以上), および経静脈的血栓溶解療法のみが施行されたI期 (1984~93年) と緊急PTCAを含めた再疎通療法が施行されたII期 (1996~98年) とに分け対比検討した結果, 院内死亡率は前期高齢者, 後期高齢者のいずれにおいてもII期で低下した. I期では経静脈的血栓溶解療法非施行群に比し施行群では院内死亡率は低かったが, 心破裂を高率に認めた. II期では再疎通療法非施行群に比し施行群ではポンプ失調死は少なく心破裂も減少したが, 非心臓死が多かったため, 院内死亡率は再疎通療法施行の有無で差を認めなかった. 以上より急性心筋梗塞の初期治療法として高齢者においても再疎通療法は有効であると考えられる. しかし高齢者では経静脈的血栓溶解療法は心破裂の発生率が高く, 最近の冠インターベンションの技術と医療器材の進歩を考慮するとPTCAが第一選択と思われる. ただしその適応については, 身体状況のみならず, 精神状況や社会的状況も加味して判断する必要がある.
ISSN:0300-9173
DOI:10.3143/geriatrics.37.272