老年者高血圧における遺伝子多型解析の意義の検討

高血圧は多因子疾患であり, その発症, 進展には複数の環境因子, 遺伝因子が関与している. これまでの高血圧の疾患感受性遺伝子に関する報告は, 大部分が若年発症の高血圧患者を用いて成されたものであり, 老年者高血圧における遺伝子多型の意義は殆ど検討されていない. 本研究では, 高血圧の候補遺伝子の7つの多型の頻度を若年者・老年者群で比較検討することにより, 老年者高血圧における遺伝子多型解析の意義を検討した. 高血圧との有意な相関は, 若年者におけるアンジオテンシノーゲン遺伝子のT235アリル, 及び若年男性におけるアンジオテンシンII-2型受容体遺伝子のA3123アリルのみで認められた. ア...

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Published in日本老年医学会雑誌 Vol. 36; no. 8; pp. 547 - 552
Main Authors 荻原, 俊男, 檜垣, 實男, 勝谷, 友宏, 佐藤, 憲幸, 石川, 一彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本老年医学会 25.08.1999
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ISSN0300-9173
DOI10.3143/geriatrics.36.547

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Summary:高血圧は多因子疾患であり, その発症, 進展には複数の環境因子, 遺伝因子が関与している. これまでの高血圧の疾患感受性遺伝子に関する報告は, 大部分が若年発症の高血圧患者を用いて成されたものであり, 老年者高血圧における遺伝子多型の意義は殆ど検討されていない. 本研究では, 高血圧の候補遺伝子の7つの多型の頻度を若年者・老年者群で比較検討することにより, 老年者高血圧における遺伝子多型解析の意義を検討した. 高血圧との有意な相関は, 若年者におけるアンジオテンシノーゲン遺伝子のT235アリル, 及び若年男性におけるアンジオテンシンII-2型受容体遺伝子のA3123アリルのみで認められた. アポリポ蛋白Eのプロモーター領域のT-491A多型やαアデュシン遺伝子多型でも同様の傾向が認められたが, アンジオテンシン変換酵素の挿入・欠失多型, MTHFR (methylenetetrahydrofolate reductase) の Gly460Trp多型, アンジオテンシンII-1型受容体遺伝子のA1166C多型, アポリポ蛋白Eのε2,3,4多型では, 高血圧に対するオッズ比に若年者・老年者間で違いが認められず, 加齢による疾患感受性の変化は遺伝子多型により異なることが示唆された. 今後の疾患感受性遺伝子解析では, より大規模な一般集団を用いて, 遺伝子多型が実際の疾患の発症や合併症の頻度, 致死率に及ぼす影響を経時的に観察していくことが重要であると考えられる.
ISSN:0300-9173
DOI:10.3143/geriatrics.36.547