健康青壮年者の運動時における心臓緊急症と蘇生

健常な青壮年が運動時, 突然死を起こすことがしばしばあり, 今日の体力医学において重大な問題となっている. 競走馬のサラブレッドは2~3歳でヒトの思春期~青春期に相当し, きわめて優れた運動適性の心機能を有する動物である. このサラブレッドがレース中に突発的に不整脈を発生して, スピード低下, 時には死亡することがある. このことは青壮年の突然死に対するよい疾患モデルと考えられる. 実験方法 サラブレッドAB誘導(ヒト第II誘導に相当)およびI°AV-ブロックを有する健常男子10名にこの研究主旨を説明して100%トレッドミル負荷後に心電図その他の検査を施行. さらにI°AV-ブロックを有する2...

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Published in蘇生 Vol. 4; p. 54
Main Authors 天方義邦, 西澤芳男, 松下嘉明, 則岡美保子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本蘇生学会 1986
The Japanese Society of Reanimatology
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ISSN0288-4348
1884-748X
DOI10.11414/jjreanimatology1983.4.54

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Summary:健常な青壮年が運動時, 突然死を起こすことがしばしばあり, 今日の体力医学において重大な問題となっている. 競走馬のサラブレッドは2~3歳でヒトの思春期~青春期に相当し, きわめて優れた運動適性の心機能を有する動物である. このサラブレッドがレース中に突発的に不整脈を発生して, スピード低下, 時には死亡することがある. このことは青壮年の突然死に対するよい疾患モデルと考えられる. 実験方法 サラブレッドAB誘導(ヒト第II誘導に相当)およびI°AV-ブロックを有する健常男子10名にこの研究主旨を説明して100%トレッドミル負荷後に心電図その他の検査を施行. さらにI°AV-ブロックを有する2症例の運動中に心調律異常を発生した経験を供覧. 結果 1)レース中にスピードが低下したウマは, 心房細動, 多源性心室性期外収縮などを呈した. レースを中止すると回復するが, そのまま継続すると危険な例があった. 病理所見上, 洞房結節近くの右心房に限局性線維化病変, 血管運動神経の変性などが認められた. 2)I°AV-ブロック群の負荷後, 血中アドレナリン, ノルアドレナリンの上昇, 頻脈, 血圧上昇などを認め, 心房細動, 多原性心室性期外収縮, 一過性心停止を認めた. 3)心筋梗塞後のI°AV-ブロックを有する脳梗塞患者が歩行訓練中に心房細動, 心室性不整脈を起こし, リドカインその他によって蘇性できた1例および, I°AV-ブロックを有する健常人がトレッドミル負荷によって同様の心調律異常を起こした1例などを経験した. 考察 サラブレッドとヒトは運動負荷によって, 類似の心調律異常を発生して危険に陥ることがある. その際は, 安静と監視ならびに蘇生法が必要である. 謝辞 この発表に際し, サラブレッドのデータを御提供ならびに指導をいただいた日本中央競馬会競走馬総合研究所運動生理研究室長天田明男博士殿に記して深謝申し上げたい.
ISSN:0288-4348
1884-748X
DOI:10.11414/jjreanimatology1983.4.54