急性化膿性顎関節炎の1例

抗生物質が普及した近年において, 顎関節部の化膿性炎症は比較的まれであるとされている。今回われわれは慢性関節リウマチを有する患者に急性化膿性顎関節炎を併発した1症例を経験したので報告する。 患者は, 85歳の女性で1992年9月10日左側顎関節部の腫脹および疼痛を主訴に来院した。 患者は, 慢性関節リウマチのためステロイドの肘関節内局注, 静注および内服投与を受けていた。初診時, 全身倦怠感, 発熱を認め, 左側顎関節部に限局性の腫脹, 自発痛および圧痛を認めた。また, 最大開口度は15mmと開口障害を認め, 下顎咬合時の片側偏位を認めた。 X線所見では, 全歯牙で慢性辺縁性歯周炎の状態であり...

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Published in日本顎関節学会雑誌 Vol. 9; no. 2; pp. 433 - 438
Main Authors 藤田, 宏人, 杉村, 正仁, 馬場, 雅渡, 川上, 哲司, 大河内, 則昌, 高山, 賢一, 都築, 正史
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本顎関節学会 20.09.1997
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ISSN0915-3004
1884-4308
DOI10.11246/gakukansetsu1989.9.433

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Summary:抗生物質が普及した近年において, 顎関節部の化膿性炎症は比較的まれであるとされている。今回われわれは慢性関節リウマチを有する患者に急性化膿性顎関節炎を併発した1症例を経験したので報告する。 患者は, 85歳の女性で1992年9月10日左側顎関節部の腫脹および疼痛を主訴に来院した。 患者は, 慢性関節リウマチのためステロイドの肘関節内局注, 静注および内服投与を受けていた。初診時, 全身倦怠感, 発熱を認め, 左側顎関節部に限局性の腫脹, 自発痛および圧痛を認めた。また, 最大開口度は15mmと開口障害を認め, 下顎咬合時の片側偏位を認めた。 X線所見では, 全歯牙で慢性辺縁性歯周炎の状態であり, 特に〓部では歯槽骨の吸収が著明であった。下顎頭は前下方に偏位し後部関節腔隙の拡大を認めた。骨シンチグラムでは左側顎関節部に異常集積像を認めた。また, 一般臨床検査所見では, 白血球数の増加, 血沈値の亢進, CRP値の増加を認めた。 初診時顎関節穿刺にて, 黄褐色で粘稠な膿汁を吸引し, 細菌培養検査にて嫌気性菌が検出された。 以後抗生物質の全身投与, 関節腔内洗浄および早期の開口訓練を施行し, 顎機能は回復し良好な結果を得た。
ISSN:0915-3004
1884-4308
DOI:10.11246/gakukansetsu1989.9.433