老年者急性心筋梗塞例における心破裂の臨床病理学的検討

心筋梗塞の合併症としての心破裂は, 老年者に高頻度に見られる. 剖検にて確認された82例の新鮮梗塞中, 15例 (男8, 女7, 平均年齢75.8歳) に心破裂を見出し, 非破裂例67例 (男33, 女34, 平均年齢78.5歳) を対照として, 臨床病理学的に比較検討した. 病理所見では, 心重量, 冠狭窄度, 陳旧梗塞合併, 梗塞部位・大きさは群間に差を認めなかったが, 新鮮血栓は破裂群に高率であった. 心破裂の基礎病変は, 大型前壁梗塞を最多とし, 中小型も2例に見られ, また側壁梗塞の50% (4例中2例) に認められた. 裂孔は壊死の最も著明な梗塞中央部に小亀裂~スリット状で, 前壁...

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Published in日本老年医学会雑誌 Vol. 17; no. 5; pp. 503 - 510
Main Authors 伊藤, 雄二, 大川, 真一郎, 北野, 幸英, 慶田, 喜秀, 三船, 順一郎, 上田, 慶二, 杉浦, 昌也, 村上, 元孝, 嶋田, 裕之, 大津, 正一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本老年医学会 30.09.1980
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Summary:心筋梗塞の合併症としての心破裂は, 老年者に高頻度に見られる. 剖検にて確認された82例の新鮮梗塞中, 15例 (男8, 女7, 平均年齢75.8歳) に心破裂を見出し, 非破裂例67例 (男33, 女34, 平均年齢78.5歳) を対照として, 臨床病理学的に比較検討した. 病理所見では, 心重量, 冠狭窄度, 陳旧梗塞合併, 梗塞部位・大きさは群間に差を認めなかったが, 新鮮血栓は破裂群に高率であった. 心破裂の基礎病変は, 大型前壁梗塞を最多とし, 中小型も2例に見られ, また側壁梗塞の50% (4例中2例) に認められた. 裂孔は壊死の最も著明な梗塞中央部に小亀裂~スリット状で, 前壁破裂例では, 心尖~中部, 後・側壁破裂例では中部~心基部に観察された. 性別, 年齢, 心血管系合併症 (高血圧, 弁膜症など) に関し両群間に差を認めなかった. 破裂群では, 発症時の胸痛は高率で, 心電図, 血清酵素値による診断が容易であった. 発症後の心不全, ショックの合併頻度には差がなく, 破裂群で高血圧の持続は, 2例にみられた. 発症後5日以内に破裂例の全例, 非破裂例の24例(30%) が死亡した. 破裂例6例は発症後24時間以上経過したが, その5例にショックまたは心不全の出現, 増強が観察され, 3例に胸痛の再発を認め梗塞の進展が示唆された. 破裂前後で10例に心電図を記録し得た. 剖検時に心タンポナーデを示した7例のうち, 6例では急激に洞徐脈または房室接合部調律となり, 心タンポナーデを示さなかった自由壁破裂例は, 右室ペーシング施行中刺激閾値が上昇し, ペーシング無効となり死亡した2例で, 心外膜下血腫を認めた. 老年者急性心筋梗塞例では, 発症後5日以内に上記心電図変化に加え, 胸痛, 心不全, ショックの所見を呈した症例では, 心破裂を考慮する必要がある.
ISSN:0300-9173
DOI:10.3143/geriatrics.17.503