モニタリングを目的とした消化器系手術施行前後における鼻腔, 咽頭, および糞便内の細菌検索

40例の消化器系手術患者を対象として, 手術の前後における鼻腔, 咽頭および糞便の細菌検査を行い, 次のような結果を得た。 1) 症例の内訳は, 直腸癌と結腸癌があわせて20例, 胃癌が11例, 食道癌5例, その他が4例であった。食道癌と胃癌の症例では, 2例の例外を除いて, 術前には抗菌薬は投与されていなかった。腸管系の手術前には, kanamycinとmetronidazoleが投与されていた。 2) 術後に投与された抗菌薬では, cefazollnが28例ともっとも多く, 次いでHomoxefが8例, cefotiamが2例, cefmetazoleが2例であった。 3) 術前と術後に...

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Published in日本化学療法学会雑誌 Vol. 43; no. 1; pp. 1 - 11
Main Authors 生方, 公子, 杉浦, 睦, 蓮見, 直彦, 紺野, 昌俊, 花谷, 勇治, 小平, 進, 長岡, 信彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本化学療法学会 1995
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ISSN1340-7007
1884-5886
DOI10.11250/chemotherapy1995.43.1

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Summary:40例の消化器系手術患者を対象として, 手術の前後における鼻腔, 咽頭および糞便の細菌検査を行い, 次のような結果を得た。 1) 症例の内訳は, 直腸癌と結腸癌があわせて20例, 胃癌が11例, 食道癌5例, その他が4例であった。食道癌と胃癌の症例では, 2例の例外を除いて, 術前には抗菌薬は投与されていなかった。腸管系の手術前には, kanamycinとmetronidazoleが投与されていた。 2) 術後に投与された抗菌薬では, cefazollnが28例ともっとも多く, 次いでHomoxefが8例, cefotiamが2例, cefmetazoleが2例であった。 3) 術前と術後における鼻腔と咽頭からのMRSAの検出率は, 前者で3例から8例, 後者で2例から13例へと明らかに増加していた。103CFU/ml以上の菌が検出された6例では鼻腔と咽頭の両方からmethicillin-resistant Staphylococcus. aureus (MRSA) が検出されていた。これらのMRSA陽性例では, 胃チューブ抜去後もMRSAは残存したままであった。 4) 術前に鼻腔や咽頭からMSSAが検出された症例では, 術後に抗菌薬が投与されると, 菌は消失する例が多かった。 5) 術前に鼻腔や咽頭からグラム陰性桿菌が検出された症例は少なかったが, 抗菌薬が投与された術後になると, これらの細菌は高率に検出された。特に, Klebsiella属, Enterobacter属, Pseudomonas属, Acinetobacter属の検出率が高かった。胃チューブ抜去後もこれらの菌は残存していた。 6) 術後感染を生じた症例は8例認められた。発症の時期は, 1例を除いて術後5日目以降であった。起炎菌として推定あるいは確定された菌は, MRSAとPseudomonas aeruginosaが主であった。これらの菌は, 術後3日目の咽頭より検出されていることが注目された。 上述の成績から, 術前・術後に鼻腔や咽頭の細菌検査 (監視培養) を行うことは, 術後感染予防のために有益なことと考えられた。
ISSN:1340-7007
1884-5886
DOI:10.11250/chemotherapy1995.43.1