異方的超伝導体のトンネル現象 : 高温超伝導体でみられる量子干渉効果

この解説ではペアポテンシャルが異方的対称性(d波対称性)を有する高温超伝導体(銅酸化物超伝導体)を中心に, d波超伝導体が示す位相干渉効果について最近の発展を紹介する. d波の超伝導体の著しい特徴は, 従来のBCS超伝導体とは異なって, 準粒子の励起がFermi面上いたるところで有限のエネルギーギャップを持つのではなくて, Fermi面上で線状の零点を持ち, さらに準粒子の感じるペアポテンシャルの位相(符号)が変化をするということである. こうしたd波超伝導体の持つ最も重要な性質は, バルクの状態を終端させることにより現れる準粒子の干渉効果であり, トンネル効果やJosephson効果に顕著な...

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Published in日本物理学会誌 Vol. 53; no. 12; pp. 911 - 917
Main Authors 田仲, 由喜夫, 柏谷, 聡
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本物理学会 05.12.1998
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Summary:この解説ではペアポテンシャルが異方的対称性(d波対称性)を有する高温超伝導体(銅酸化物超伝導体)を中心に, d波超伝導体が示す位相干渉効果について最近の発展を紹介する. d波の超伝導体の著しい特徴は, 従来のBCS超伝導体とは異なって, 準粒子の励起がFermi面上いたるところで有限のエネルギーギャップを持つのではなくて, Fermi面上で線状の零点を持ち, さらに準粒子の感じるペアポテンシャルの位相(符号)が変化をするということである. こうしたd波超伝導体の持つ最も重要な性質は, バルクの状態を終端させることにより現れる準粒子の干渉効果であり, トンネル効果やJosephson効果に顕著な影響を及ぼす. この解説では, 高温超伝導体のトンネル効果の実験で観測されているゼロバイアスコンダクタンスのピーク(ZBCP)が(常伝導金属/絶縁体/超伝導体接合系で微分コンダクタンスがゼロバイアスボルトにおいて大きなピークを持つ現象)d波モデルを用いることで, いかに理論的かつ実験的に解明されてきたのかを解説する. さらにその周辺に広がる豊富な物理現象に言及する.
ISSN:0029-0181
2423-8872
DOI:10.11316/butsuri1946.53.911