受け取り動作における前腕筋群の運動調節に関する基礎的研究

落下物を受け取る際の視覚情報に基づいた前腕筋群の応答について, 健常者と痙性片麻痺患者を対象に, 筋電図とH反射を用いて解析した. 健常者では, 落下開始の視覚認知にともなう応答が, 落下開始後約140 msecの潜時で橈側手根屈筋に認められ, また, 橈側手根伸筋には, 一連の動作に対する“構え”によると考えられる持続的な筋活動が出現した. 落下開始から100 msec後までの橈側手根屈筋のH反射は, 伸筋群からの相反性抑制による制御を受けていたが, 落下物が手掌に到達する直前のH反射は, それを保持する際の衝撃に対する運動調節機構の変換にともなう促通現象を示唆した. 一方, 痙性片麻痺患者...

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Published inリハビリテーション医学 Vol. 34; no. 3; pp. 218 - 225
Main Author 長谷公隆
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本リハビリテーション医学会 1997
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ISSN0034-351X

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Summary:落下物を受け取る際の視覚情報に基づいた前腕筋群の応答について, 健常者と痙性片麻痺患者を対象に, 筋電図とH反射を用いて解析した. 健常者では, 落下開始の視覚認知にともなう応答が, 落下開始後約140 msecの潜時で橈側手根屈筋に認められ, また, 橈側手根伸筋には, 一連の動作に対する“構え”によると考えられる持続的な筋活動が出現した. 落下開始から100 msec後までの橈側手根屈筋のH反射は, 伸筋群からの相反性抑制による制御を受けていたが, 落下物が手掌に到達する直前のH反射は, それを保持する際の衝撃に対する運動調節機構の変換にともなう促通現象を示唆した. 一方, 痙性片麻痺患者は, 麻痺肢の随意性や視覚認知過程の問題, 同時収縮のための運動調節機構の障害にともなって, 健常者とは異なる応答パターンを示した.
ISSN:0034-351X