高齢者の咽喉頭異常感と食道クリアランス能の異常との関連

(目的) 近年, 耳鼻咽喉科領域ではGERDと咽喉頭異常感との関連が注目されている. 高齢者では下部食道括約部の静止圧の低下や, 食道クリアランス能の低下などの食道の生理的な機能低下が指摘されている. 本研究は高齢者の咽喉頭異常感と食道クリアランス能との関連性を検討するために行われた. (対象) 咽喉頭異常感症の高齢者156例(平均年齢74.7歳). (方法) 食道クリアランス能の評価として, 患者に腹臥位で造影剤を嚥下させ, 食道内での造影剤の移動状況を(1)正常群(2)食道内停滞群(3)食道内逆流群(4)咽頭内逆流群の4群に分類した. また喉頭ファイバースコープ下に, 披裂部粘膜の発赤,...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本耳鼻咽喉科学会会報 Vol. 109; no. 6; pp. 524 - 529
Main Authors 杉浦むつみ, 大前由紀雄, 茂木立学, 木村百合香, 牧野奈緒, 加藤智史
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本耳鼻咽喉科学会 2006
Online AccessGet full text
ISSN0030-6622

Cover

More Information
Summary:(目的) 近年, 耳鼻咽喉科領域ではGERDと咽喉頭異常感との関連が注目されている. 高齢者では下部食道括約部の静止圧の低下や, 食道クリアランス能の低下などの食道の生理的な機能低下が指摘されている. 本研究は高齢者の咽喉頭異常感と食道クリアランス能との関連性を検討するために行われた. (対象) 咽喉頭異常感症の高齢者156例(平均年齢74.7歳). (方法) 食道クリアランス能の評価として, 患者に腹臥位で造影剤を嚥下させ, 食道内での造影剤の移動状況を(1)正常群(2)食道内停滞群(3)食道内逆流群(4)咽頭内逆流群の4群に分類した. また喉頭ファイバースコープ下に, 披裂部粘膜の発赤, 披裂間粘膜浮腫, 梨状陥凹の唾液貯留の有無を観察した. (結果) 正常群36例, 食道内停滞群8例, 食道内逆流群79例, 咽頭内逆流群33例で, 食道内逆流群と咽頭内逆流群を合わせると156例中112例(71.8%)に食道内での逆流現象が観察された. 披裂部粘膜の発赤が156例中76例(48.7%)に認められ, この内61例(80.3%)に食道内での逆流現象が観察された. (結語) 高齢者の食道クリアランス能の低下は, 胃酸暴露に対する防御機構の減弱に繋がり, 咽喉頭異常感発症の増悪因子になると結論した. また腹臥位による咽頭食道造影検査は, 安全かつ簡便に食道クリアランス能を評価できる優れた検査法であると考えられた.
ISSN:0030-6622