ラット実験齲蝕による病理学的研究 とくに象牙質齲蝕病像と歯髄病変について
SD系ラットにcariogenic dietを与え齲蝕を発生せしめ, 象牙質齲蝕の罹患状況や病像および歯髄病変を経週的に病理組織学的に検討した。罹患状況はM1とM2の両者で, ともに病変を認めるものが最も多く, M3での罹患はほとんどなかった。齲蝕病変は5週経過のもので, はじめてごく表層に限局して病変の成立をみ, 以後, 8週経過のものでは象牙質厚径の約2/3が侵かされているものが大多数を占め, 11週以上例では, ほとんどのものが露髄を呈した・なお, ラットではヒトでみられない咬頭頂部のenamel free部からの病変の進行をみるものがあった。一般に齲蝕病像は溶解原巣, 裂隙形成, 感染...
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Published in | 歯科基礎医学会雑誌 Vol. 27; no. 4; pp. 1115 - 1131 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | English Japanese |
Published |
歯科基礎医学会
20.12.1985
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ISSN | 0385-0137 |
DOI | 10.2330/joralbiosci1965.27.1115 |
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Summary: | SD系ラットにcariogenic dietを与え齲蝕を発生せしめ, 象牙質齲蝕の罹患状況や病像および歯髄病変を経週的に病理組織学的に検討した。罹患状況はM1とM2の両者で, ともに病変を認めるものが最も多く, M3での罹患はほとんどなかった。齲蝕病変は5週経過のもので, はじめてごく表層に限局して病変の成立をみ, 以後, 8週経過のものでは象牙質厚径の約2/3が侵かされているものが大多数を占め, 11週以上例では, ほとんどのものが露髄を呈した・なお, ラットではヒトでみられない咬頭頂部のenamel free部からの病変の進行をみるものがあった。一般に齲蝕病像は溶解原巣, 裂隙形成, 感染象牙細管などが著明にみられ, ヒトの急性象牙質齲蝕病像と同様の所見であった。歯髄病変は一般に充血, 出血などの循環障害が著明で, 液性浸出は顕著であったが, 細胞性浸出は明らかでなかった。とくに膿瘍形成やヒトでみられる急性化膿性炎を示すものは極めて稀れであった。なお歯髄では線維化と第2象牙質形成が著明であった。露髄例では広範な壊疽性変化をみ, 極めて多数の球菌, 桿菌の増殖をみた。齲蝕病変の程度と歯髄病変の程度との問には一定の関連性はみられなかった。 |
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ISSN: | 0385-0137 |
DOI: | 10.2330/joralbiosci1965.27.1115 |