血液透析患者の味覚閾値

「緒言」近年の食生活の欧米化に伴い, 糖尿病の増加とその進行によって慢性腎不全による血液透析療法を受ける患者が急増している. 慢性腎不全に至る原因は, 慢性糸球体腎炎の他に糖尿病性腎症が多くを占めている. 血液透析患者の食事療法の重要性は言うまでもなく, 適切な食事指導のためには, 患者の味覚や食品の嗜好性について理解することが欠かせない. 従来, 血液透析患者と味覚の関係について, 血液透析患者では味覚に影響を受け, 苦味や塩味に対する感度が落ち1,2), スープの塩分濃度の好みも, 健常者に比べ塩分濃度の高いものを好む3)という報告がある. しかし, 血液透析が味覚に及ぼす詳細な研究は不足...

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Published in栄養学雑誌 Vol. 65; no. 4; pp. 173 - 177
Main Authors 堀尾強, 森本真理, 楢崎有季子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本栄養改善学会 01.08.2007
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ISSN0021-5147

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Summary:「緒言」近年の食生活の欧米化に伴い, 糖尿病の増加とその進行によって慢性腎不全による血液透析療法を受ける患者が急増している. 慢性腎不全に至る原因は, 慢性糸球体腎炎の他に糖尿病性腎症が多くを占めている. 血液透析患者の食事療法の重要性は言うまでもなく, 適切な食事指導のためには, 患者の味覚や食品の嗜好性について理解することが欠かせない. 従来, 血液透析患者と味覚の関係について, 血液透析患者では味覚に影響を受け, 苦味や塩味に対する感度が落ち1,2), スープの塩分濃度の好みも, 健常者に比べ塩分濃度の高いものを好む3)という報告がある. しかし, 血液透析が味覚に及ぼす詳細な研究は不足している. 本研究では, 甘味・塩味・酸味・苦味・うま味の5基本味質について血液透析患者の味覚閾値と基礎疾患や透析期間, 年齢などの種々の要因との関係を調べた. 「方法」1. 被験者 血液透析による血液浄化療法中の, 血液透析直後の慢性腎不全患者(医療法人純幸会豊中渡辺病院外来透析患者)18名(男6名女12名, 年齢51~77歳, 平均年齢63.0歳, 基礎疾患は慢性糸球体腎炎11名と糖尿病性腎症7名)及びその年齢にほぼ相当する健常者18名(男6名女12名, 年齢51~78歳, 平均年齢63.1歳)であった. 検査の30分以上前からの飲食並びに, 喫煙者には喫煙を避けることをお願いした.
ISSN:0021-5147