徐拍性不整脈の臨床電気生理学的研究 第2編 : 房室伝導障害におけるヒス束電位記録の有用性と限界について

房室伝導障害100例 (1度房室ブロック: 26例, 2度房室ブロック24例, 完全房室ブロック50例) のヒス束電位図所見, 心電図所見及び臨床的所見を比較検討し, ヒス束電位記録の有用性と限界, 及び洞機能不全症候群 (SSS) の合併につき言及した。その結果: A-Hブロック44例, ヒス束内ブロック19例, H-Vブロック37例であった。心房内伝導遅延はSSS例に比べ低頻度で慢性洞性徐拍や臨床的にもSSS合併例は稀であった。従って第1編で述べた事実とも関連しSSSが将来完全房室ブロックを合併することは稀有であると考えられた。更に, QRS巾延長は, H-Vブロックの大部分を占めたがヒス...

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Published in順天堂医学 Vol. 28; no. 3; pp. 350 - 366
Main Author 桜井, 秀彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 順天堂医学会 1982
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ISSN0022-6769
2188-2134
DOI10.14789/pjmj.28.350

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Summary:房室伝導障害100例 (1度房室ブロック: 26例, 2度房室ブロック24例, 完全房室ブロック50例) のヒス束電位図所見, 心電図所見及び臨床的所見を比較検討し, ヒス束電位記録の有用性と限界, 及び洞機能不全症候群 (SSS) の合併につき言及した。その結果: A-Hブロック44例, ヒス束内ブロック19例, H-Vブロック37例であった。心房内伝導遅延はSSS例に比べ低頻度で慢性洞性徐拍や臨床的にもSSS合併例は稀であった。従って第1編で述べた事実とも関連しSSSが将来完全房室ブロックを合併することは稀有であると考えられた。更に, QRS巾延長は, H-Vブロックの大部分を占めたがヒス束中枢側のブロックでも半数近くに認めた。ブロック移行前の心電図検討でH-Vブロックは, 前額面平均電気軸, QRS巾延長, P-Q時間延長等全てに異常を示す例が多く単にP-Q時間延長例ではA-Hブロックに多かった。しかし, 突然完全房室ブロックへ移行した例が, A-Hブロック31%, ヒス束内ブロック13%, H-Vブロック28%にも認められた。臨床的に完全房室ブロック時の心室拍数は, 各ブロック部位で差はないが, 脳虚血症状はH-Vブロックに多かった。又, 各ブロック部位の1度房室ブロック例で一過性に2度以上の房室ブロックへの移行が示唆される脳虚血症状を認めた。以上から, ブロック部位の診断には, 未だヒス束電位の記録が重要であるが, 単にヒス束電位記録のみでは診断不可能な例もあった。こうした例では, 同時に高頻度心房刺激や薬物等の負荷による伝導障害部位の誘発診断, 又, 臨床的及び24時間心電計等での長期間の注意深い観察が肝要である。
ISSN:0022-6769
2188-2134
DOI:10.14789/pjmj.28.350