硬膜外腔穿刺時の陰圧の成因に関する一考察

目的: 側臥位で hanging drop 法を用いて硬膜外腔の確認を行うとき, 水滴の動きは瞬間的であり持続的ではない. これは, 硬膜外腔穿刺時の陰圧が瞬間的であることを示すものである. 今回この陰圧の発生要因を検討した. 方法: 29例でL2/3あるいはL3/4から17 G Tuohy 針を棘間靱帯まで穿刺し, 圧トランスデューサを接続し, 硬膜外腔穿刺時の圧変化を記録した. また, 2枚のゴムシートと8mm, 10mm, 15mmの厚さに切断した注射器で作製した硬膜外腔穿刺モデルを用いて黄色靱帯とみたゴムシート穿通時の圧変化を記録した. 結果: 臨床での測定では3種類の圧変化のパターン...

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Published in日本ペインクリニック学会誌 Vol. 2; no. 3; pp. 399 - 404
Main Authors 福重, 哲志, 佐野, 智美, 新山, 修平, 無敵, 剛介
Format Journal Article
LanguageEnglish
Japanese
Published 一般社団法人 日本ペインクリニック学会 25.10.1995
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Summary:目的: 側臥位で hanging drop 法を用いて硬膜外腔の確認を行うとき, 水滴の動きは瞬間的であり持続的ではない. これは, 硬膜外腔穿刺時の陰圧が瞬間的であることを示すものである. 今回この陰圧の発生要因を検討した. 方法: 29例でL2/3あるいはL3/4から17 G Tuohy 針を棘間靱帯まで穿刺し, 圧トランスデューサを接続し, 硬膜外腔穿刺時の圧変化を記録した. また, 2枚のゴムシートと8mm, 10mm, 15mmの厚さに切断した注射器で作製した硬膜外腔穿刺モデルを用いて黄色靱帯とみたゴムシート穿通時の圧変化を記録した. 結果: 臨床での測定では3種類の圧変化のパターンがみられた, 19例では硬膜外腔穿刺時に瞬間的に陰圧となり, その後も陰圧が持続した. 8例では黄色靱帯穿通時には同様の陰圧を示したがその後陽圧を示した. 2例では急激な圧の低下を示すが経過を通して陰圧が認められなかった. 硬膜外腔穿刺モデルでは, 8mmのモデルでは黄色靱帯とみたゴムシートの穿通後, 陰圧が持続する例が多く, また, その時点で硬膜外針はすでに硬膜とみたゴムシートを強く圧迫していた. 10mmのモデルでは, 穿通後の陰圧の程度は大きいものの回復する例がみられ, 15mmのモデルでは硬膜外針は硬膜とみたゴムシートに達しないが, 黄色靱帯とみたゴムシートの穿通時に瞬間的な陰圧が記録された. 結論: 硬膜外腔穿刺時の圧変化は, 黄色靱帯穿通時の陰圧と硬膜圧迫による圧の合成によるものと思われる. 黄色靱帯のみでも hanging drop sign の原因となりうる.
ISSN:1340-4903
1884-1791
DOI:10.11321/jjspc1994.2.399