抗ヌクレオカイン(抗HMGB1)単クローン抗体の脳梗塞治療への応用

「1. はじめに」脳梗塞をはじめとする虚血性脳障害は, 現代の集約的先端治療をもってしても未だに死亡原因の上位を占め, 重篤な後遺症のために要する介護などの医療経済的損失も極めて甚大であることから, 21世紀において克服すべき最重要課題の1つである. 脳梗塞(虚血)に伴う細胞障害の程度は, 虚血時間や血液再灌流の有無などの様々な要素が複雑に関係している. 脳梗塞(虚血)中心部すなわち「コア領域」では, 直ちに脳血流量や脳代謝の低下が生じることとなるが, 虚血の周辺部ではしばらくは細胞壊死に陥らず生き残っている領域が存在し「ペナンブラ領域」と呼ばれている. 脳梗塞(虚血)後, 速やかに血流を回復...

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Published inYAKUGAKU ZASSHI Vol. 129; no. 1; pp. 25 - 31
Main Authors 森秀治a, 劉克約b, 高橋英夫b, 西堀正洋b
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本薬学会 2009
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ISSN0031-6903

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Summary:「1. はじめに」脳梗塞をはじめとする虚血性脳障害は, 現代の集約的先端治療をもってしても未だに死亡原因の上位を占め, 重篤な後遺症のために要する介護などの医療経済的損失も極めて甚大であることから, 21世紀において克服すべき最重要課題の1つである. 脳梗塞(虚血)に伴う細胞障害の程度は, 虚血時間や血液再灌流の有無などの様々な要素が複雑に関係している. 脳梗塞(虚血)中心部すなわち「コア領域」では, 直ちに脳血流量や脳代謝の低下が生じることとなるが, 虚血の周辺部ではしばらくは細胞壊死に陥らず生き残っている領域が存在し「ペナンブラ領域」と呼ばれている. 脳梗塞(虚血)後, 速やかに血流を回復させたり組織保護的な処置を行うことが, ペナンブラ領域の保護すなわち細胞壊死や梗塞領域の拡大防止につながる可能性を持つことになる.1) 血栓形成に伴う血流途絶によって, 酸素とグルコースの供給がストップしATPの枯渇が生じる. その後, 細胞膜イオンポンプの破綻により細胞膜脱分極が起こり, 膜電位依存性Ca2+チャネル活性化やグルタミン酸受容体の活性化による細胞内Ca2+濃度の増大が生じる.
ISSN:0031-6903