進行性筋ジストロフィー症の肺機能 3年間の追跡およびその考察

進行性筋ジストロフィー症は,その本態の究明が急がれている疾患の一つである.臨床的には,なかんずく,肺不全による死亡率は高く,呼吸機能について,さらに充分な検討がなされなければならないと考え, 8~18才の進行性筋ジストロフィー症患者18例を対象に,その換気機能と動脈血ガス分析を, 3年間に亘り経時的に観察をつづけてきた.その結果,換気機能では,拘束性障害を示し,次第に進行していた.その肺気量分画では,残気量の増加と予備呼気量の減少がとくに目立ち,残気率は次第に増大していた.また1回換気量も比較的小さく,死腔を考慮に入れると,有効肺胞換気量が充分だとは思えなかつた.これらの換気障害にもかかわらず...

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Published in日本内科学会雑誌 Vol. 64; no. 5; pp. 483 - 490
Main Authors 尾崎, 輝久, 志摩, 清, 杉本, 峯晴, 福田, 安嗣, 岡本, 定昭, 佐藤, 紘二, 徳臣, 晴比古, 木村, 元, 出田, 透, 安藤, 正幸, 岡嶋, 透, 今西, 康二, 安武, 敏明
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本内科学会 01.05.1975
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ISSN0021-5384
1883-2083
DOI10.2169/naika.64.483

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Summary:進行性筋ジストロフィー症は,その本態の究明が急がれている疾患の一つである.臨床的には,なかんずく,肺不全による死亡率は高く,呼吸機能について,さらに充分な検討がなされなければならないと考え, 8~18才の進行性筋ジストロフィー症患者18例を対象に,その換気機能と動脈血ガス分析を, 3年間に亘り経時的に観察をつづけてきた.その結果,換気機能では,拘束性障害を示し,次第に進行していた.その肺気量分画では,残気量の増加と予備呼気量の減少がとくに目立ち,残気率は次第に増大していた.また1回換気量も比較的小さく,死腔を考慮に入れると,有効肺胞換気量が充分だとは思えなかつた.これらの換気障害にもかかわらず,動脈血ガス分圧はほぼ正常範囲にあり,この両者は,一見矛盾する様にみえる.しかし,進行性筋ジストロフィー症では,単位時間当りの酸素消費量と炭酸ガス産生量が,共に低い状態に維持されているためであると理論的に推測することによつて,実際には,両者が矛盾していないことを示した.
ISSN:0021-5384
1883-2083
DOI:10.2169/naika.64.483