膵管内乳頭粘液性腺癌切除後早期に残膵に浸潤性膵管癌を来した1例

症例は59歳の男性で, 糖尿病の加療目的で入院中, 腹部CTで膵頭部に嚢胞性腫瘤を指摘された. 画像上, 膵頭部の分枝型IPMCの診断で膵頭十二指腸切除術を施行した. 病理組織学的診断は微小浸潤型IPMCで切除断端は癌陰性であった. 術後4か月目から腫瘍マーカーの上昇を認め, 6か月目の腹部CTで残膵に3cm大の腫瘍を認めたため, 残膵癌の診断で残膵全摘を施行した. 病理組織は高度な脈管浸潤を伴った中分化型管状腺癌で, 癌とその周囲組織ともに膵管内の腺腫成分や乳頭状増殖は認めず, 全切片で浸潤型発育を示していた. また, 初発IPMCではMUC1陽性, MUC2陽性でK-ras変異陰性であった...

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Published in日本消化器外科学会雑誌 Vol. 41; no. 12; pp. 2053 - 2057
Main Authors 高倉, 秀樹, 上田, 倫夫, 清水, 哲也, 松尾, 憲一, 武田, 和永, 田中, 邦哉, 市川, 靖史, 遠藤, 格, 渡会, 伸治, 嶋田, 紘
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器外科学会 2008
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Summary:症例は59歳の男性で, 糖尿病の加療目的で入院中, 腹部CTで膵頭部に嚢胞性腫瘤を指摘された. 画像上, 膵頭部の分枝型IPMCの診断で膵頭十二指腸切除術を施行した. 病理組織学的診断は微小浸潤型IPMCで切除断端は癌陰性であった. 術後4か月目から腫瘍マーカーの上昇を認め, 6か月目の腹部CTで残膵に3cm大の腫瘍を認めたため, 残膵癌の診断で残膵全摘を施行した. 病理組織は高度な脈管浸潤を伴った中分化型管状腺癌で, 癌とその周囲組織ともに膵管内の腺腫成分や乳頭状増殖は認めず, 全切片で浸潤型発育を示していた. また, 初発IPMCではMUC1陽性, MUC2陽性でK-ras変異陰性であったのに対し, 残膵浸潤癌ではMUC1陽性, MUC2陰性, K-ras変異陽性であった. 以上より, 本症例におけるIPMCと残膵浸潤癌の発生源は異なるものと考えられた.
ISSN:0386-9768
1348-9372
DOI:10.5833/jjgs.41.2053