プロテインS欠乏症による上腸間膜静脈血栓症の1例

症例は32歳の男性, 日系ブラジル人. 主訴は左側腹部痛. 腹部所見で筋性防御, CTで小腸の限局性の肥厚を認め開腹術を施行した. 手術所見では約30cmの範囲の回腸壁の発赤と, 同部位の回腸静脈および上腸間膜静脈内の血栓を認め, 回腸部分切除を行った. 術後3日目に再び腹痛を訴え, CTでも小腸の広範囲な浮腫, 腹水を認めたため再開腹し広範囲小腸切除を施行した. 再手術後はヘパリン, ウロキナーゼの持続点滴とワーファリンの内服により軽快退院した. 患者には特に既往歴はなかったが, 家族歴として父と兄が上腸間膜静脈血栓症を発症していた. また, 凝固機能異常としてプロテインSが低値を示した....

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Published in日本消化器外科学会雑誌 Vol. 31; no. 12; pp. 2388 - 2391
Main Authors 杉浦, 禎一, 新實, 紀二, 横井, 俊平, 神谷, 里明, 鈴木, 正彦, 青野, 景也
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器外科学会 1998
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Summary:症例は32歳の男性, 日系ブラジル人. 主訴は左側腹部痛. 腹部所見で筋性防御, CTで小腸の限局性の肥厚を認め開腹術を施行した. 手術所見では約30cmの範囲の回腸壁の発赤と, 同部位の回腸静脈および上腸間膜静脈内の血栓を認め, 回腸部分切除を行った. 術後3日目に再び腹痛を訴え, CTでも小腸の広範囲な浮腫, 腹水を認めたため再開腹し広範囲小腸切除を施行した. 再手術後はヘパリン, ウロキナーゼの持続点滴とワーファリンの内服により軽快退院した. 患者には特に既往歴はなかったが, 家族歴として父と兄が上腸間膜静脈血栓症を発症していた. また, 凝固機能異常としてプロテインSが低値を示した. 本症例は悪性腫瘍, 感染症, 薬剤服用その他血栓症の誘因となるものはなく, プロテインS欠乏症による凝固異常症が原因と考えられた.
ISSN:0386-9768
1348-9372
DOI:10.5833/jjgs.31.2388