S・Rs大腸癌手術の予後における腹腔鏡補助下手術と開腹手術の比較検討

はじめに: 大腸癌の手術治療における予後を含めた治療成績について, 腹腔鏡補助下大腸切除術 (以下, LAC) と開腹大腸切除術 (以下, OC) を比較検討した. 対象と方法: 1996年から2005年にかけて岩手医科大学外科学第1講座で施行した大腸癌切除790例中, 手術手技の類似したS状結腸癌およびRs直腸癌266例のうちの, 組織学的根治度AかつD3郭清施行例88例を対象とし, LAC群: 43例とOC群: 45例の2群に分けて, 臨床病理学的諸因子および術後成績について比較検討した. 結果: 1) 手術侵襲では, 術中出血量はLAC群が18mlとOC群の271mlに比べて有意に低値で...

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Published in日本消化器外科学会雑誌 Vol. 39; no. 11; pp. 1658 - 1665
Main Authors 板橋, 哲也, 若林, 剛, 岡本, 和美, 樋口, 太郎, 旭, 博史, 藤澤, 健太郎, 斎藤, 和好, 秋山, 有史, 川崎, 雄一郎, 大塚, 幸喜
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器外科学会 2006
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ISSN0386-9768
1348-9372
DOI10.5833/jjgs.39.1658

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Summary:はじめに: 大腸癌の手術治療における予後を含めた治療成績について, 腹腔鏡補助下大腸切除術 (以下, LAC) と開腹大腸切除術 (以下, OC) を比較検討した. 対象と方法: 1996年から2005年にかけて岩手医科大学外科学第1講座で施行した大腸癌切除790例中, 手術手技の類似したS状結腸癌およびRs直腸癌266例のうちの, 組織学的根治度AかつD3郭清施行例88例を対象とし, LAC群: 43例とOC群: 45例の2群に分けて, 臨床病理学的諸因子および術後成績について比較検討した. 結果: 1) 手術侵襲では, 術中出血量はLAC群が18mlとOC群の271mlに比べて有意に低値であった (P<0.0001) が, 手術時間はLAC群が211min. に対しOC群228min., 郭清リンパ節個数もLAC群22個に対しOC群24個と有意差は認められなかった. 2) 術後在院期間はLAC群が13日とOC群の25日に比べて有意に低値であった (P<0.0001). 3) 合併症発生率は, LAC群が9.3%とOC群の22.2%に比べて低率ではあったが, 有意差は認められなかった. 4) 再発率は, LAC群が4.7%とOC群の11.1% に比べて低率ではあったが, 有意差は認められなかった. 5) Overallの5年生存率では, LAC群が100%に対しOC群が93.2%, 5年無再発生存率でもLAC群が95.2%に対しOC群が86.6%と, LAC群が高率であったが有意差は認められなかった. 考察: S・Rs大腸癌において, LACはOCに対して短期予後にbenefitを有しているだけでなく, 中長期の予後においてもほぼ同等かそれ以上の結果が得られたことから, oncologic resectionの見地からも, 開腹手術に比肩しえる手術手技であることが示唆された.
ISSN:0386-9768
1348-9372
DOI:10.5833/jjgs.39.1658