内ヘルニアによる腸閉塞を合併した成人腸回転異常症の1例

症例は65歳の女性で, 右側腹部痛と嘔吐を主訴に近医を受診し, イレウスの疑いにて当院を紹介受診した. 開腹歴. 腹部は軽度膨満し軽い圧痛を認めるも, 腹膜刺激症状は認めなかった. イレウスチューブを挿入し経過観察としたが, 腹部CTにて拡張した小腸が結腸の腹側に存在し, また上部消化管造影にて十二指腸水平部を認めず, 小腸が右上腹部を屈曲蛇行していたことより腸回転異常症を疑った. 症状の改善を認めず4日後手術を施行した. 腹腔鏡にて観察すると肝下面と背側腹膜との間に膜性癒着が存在し, 膜内の直径2cmの裂孔に小腸が陥入していた. 陥入小腸を整復するのは容易で, その後ヘルニア門である裂孔を切...

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Published in日本消化器外科学会雑誌 Vol. 38; no. 11; pp. 1756 - 1760
Main Authors 原田, 裕久, 小川, 信二, 佐藤, 道夫, 安藤, 暢敏, 半田, 寛
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器外科学会 2005
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ISSN0386-9768
1348-9372
DOI10.5833/jjgs.38.1756

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Summary:症例は65歳の女性で, 右側腹部痛と嘔吐を主訴に近医を受診し, イレウスの疑いにて当院を紹介受診した. 開腹歴. 腹部は軽度膨満し軽い圧痛を認めるも, 腹膜刺激症状は認めなかった. イレウスチューブを挿入し経過観察としたが, 腹部CTにて拡張した小腸が結腸の腹側に存在し, また上部消化管造影にて十二指腸水平部を認めず, 小腸が右上腹部を屈曲蛇行していたことより腸回転異常症を疑った. 症状の改善を認めず4日後手術を施行した. 腹腔鏡にて観察すると肝下面と背側腹膜との間に膜性癒着が存在し, 膜内の直径2cmの裂孔に小腸が陥入していた. 陥入小腸を整復するのは容易で, その後ヘルニア門である裂孔を切開拡大した. 臍上にて小開腹を加えて全小腸を観察し, 血行障害のないことおよびnonrotationの腸回転異常症であることを確認した. 本症例のような腸回転異常症と非特異的な膜性癒着による内ヘルニアとの合併例の報告は稀少である.
ISSN:0386-9768
1348-9372
DOI:10.5833/jjgs.38.1756