腎癌の化学療法 I. ヒト腎癌細胞培養株を用いた再増殖法による抗癌剤感受性試験

腎癌に対する有効抗癌剤を選択するためにヒト腎癌培養細胞株を用いての再増殖測定法による抗癌剤感受性試験を行った. 標的細胞として腎癌由来株2種 (NRG-12, KU-2) および対照としてのヒト羊膜上皮細胞由来株 (FL) を用いた. 検討した薬剤はACNU, CQ, ADM, MMC, CDDPならびに5-FUの6種類であった. 薬剤負荷時間は2時間とし, 再増殖測定法にて各薬剤のそれぞれの培養株に対する90%致死濃度 (LD90) を求めた. このLD90の値を基に, (1) 治療係数 (薬剤の最大耐量/LD90), (2) 臨床係数(LD90/常用投与量での推定血中薬剤濃度), (3)...

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Published in日本泌尿器科學會雑誌 Vol. 77; no. 11; pp. 1796 - 1804
Main Author 大沢, 哲雄
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 日本泌尿器科学会 20.11.1986
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Summary:腎癌に対する有効抗癌剤を選択するためにヒト腎癌培養細胞株を用いての再増殖測定法による抗癌剤感受性試験を行った. 標的細胞として腎癌由来株2種 (NRG-12, KU-2) および対照としてのヒト羊膜上皮細胞由来株 (FL) を用いた. 検討した薬剤はACNU, CQ, ADM, MMC, CDDPならびに5-FUの6種類であった. 薬剤負荷時間は2時間とし, 再増殖測定法にて各薬剤のそれぞれの培養株に対する90%致死濃度 (LD90) を求めた. このLD90の値を基に, (1) 治療係数 (薬剤の最大耐量/LD90), (2) 臨床係数(LD90/常用投与量での推定血中薬剤濃度), (3) 副作用係数 (LD90/FL株に対するLD90) の3係数を得た. これらの係数より各薬剤を比較検討した結果, NRC-12とKU-2の両腎癌株はCQとADMに強い感受性を示した. 他の4剤に対する感受性は低く, 両株の薬剤感受性にはある程度の共通性が認められた. 両腎癌株に対するLD90と正常羊膜上皮由来株に対するLD90を比較して得た副作用係数は, CQおよびADMは共に小さく, 両薬剤の腎癌に対する臨床効果が充分に期待できた. 次に腎癌株に有効であったCOとADMのうち, ADMの臨床投与における血中および組織内濃度を測定した. ADM 40~60mg/body 静注後60~120分間は, in vitro で得た腎癌細胞に対するLD90に匹敵する血中濃度を維持しており, 組織内濃度も正常腎実質部より低濃度であったが, 腎癌腫部分にも高濃度にADMの集積が認められた.
ISSN:0021-5287
1884-7110
DOI:10.5980/jpnjurol1928.77.11_1796