言語のしくみ ─ 失語の症候から

【要旨】言語のしくみをめぐるトピックスを3つとりあげ、その諸問題を、言語症候から論じた。第一には言語の機能局在をどう考えるか、第二にはカテゴリー特異性・モダリティー特性をどう考えるか、第三には文処理の機能をどう考えるかである。言語の機能局在については、言語症候を、要素的症候に分解することが合理的であると考えた。要素的症候と責任病巣は以下である ; ① 発語失行/失構音(左中心前回中~下部and/orその皮質下)、② 音韻性錯語(左上側頭葉回後部~縁上回~中心後回)and/orその皮質下、③ 単語の理解障害(左側頭葉/中前頭回and/orその皮質下)、④ 呼称(左下前頭回、側頭葉and/orその...

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Published in認知神経科学 Vol. 20; no. 3+4; pp. 157 - 164
Main Author 大槻, 美佳
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 認知神経科学会 2018
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Summary:【要旨】言語のしくみをめぐるトピックスを3つとりあげ、その諸問題を、言語症候から論じた。第一には言語の機能局在をどう考えるか、第二にはカテゴリー特異性・モダリティー特性をどう考えるか、第三には文処理の機能をどう考えるかである。言語の機能局在については、言語症候を、要素的症候に分解することが合理的であると考えた。要素的症候と責任病巣は以下である ; ① 発語失行/失構音(左中心前回中~下部and/orその皮質下)、② 音韻性錯語(左上側頭葉回後部~縁上回~中心後回)and/orその皮質下、③ 単語の理解障害(左側頭葉/中前頭回and/orその皮質下)、④ 呼称(左下前頭回、側頭葉and/orその皮質下)。カテゴリー特異性のある単語の理解・呼称障害は、その対象と関わる際に用いる入出力処理の部位と関係していた。これは、カテゴリー特異性と、モダリティー特異性が、密接に関わっていることを示している。このことより、言語の意味・概念の処理は、入出力と切り離せない構造をしていることが示唆される。文処理に関しては、臨床の諸データから、‘文法’と一括りにできない多様な側面があり、様々な脳部位が関与していることが示された。
ISSN:1344-4298
1884-510X
DOI:10.11253/ninchishinkeikagaku.20.157