新規抗悪性腫瘍薬S-1の各配合成分の体内動態(第8報):動物種差および用量依存性
S-1の動物種差について明らかにするためにマウス,ラットおよびイヌを用いたS-1の動態試験を試みた.また,イヌにS-1の投与量を変えて経口投与した時の各未変化体とその代謝物についてpharmacokinetic parameterを算出し,用量依存性について検討した.1.マウス,ラットおよびイヌを用いたS-1の動態試験の結果,血漿中FTはいずれの動物種においてもCmaxに顕著な差は認められなかった.しかし,イヌのAUCは103155ng·hr/mlともっとも高く,ラットが53600ng·hr/ml,マウスは4180ng·hr/mlであった.この種差はT1/2値にも見られた.血漿中5-FUはマウ...
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Published in | 薬物動態 Vol. 12; no. 6; pp. 656 - 667 |
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Main Authors | , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | English Japanese |
Published |
日本薬物動態学会
31.12.1997
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Subjects | |
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ISSN | 0916-1139 |
DOI | 10.2133/dmpk.12.656 |
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Summary: | S-1の動物種差について明らかにするためにマウス,ラットおよびイヌを用いたS-1の動態試験を試みた.また,イヌにS-1の投与量を変えて経口投与した時の各未変化体とその代謝物についてpharmacokinetic parameterを算出し,用量依存性について検討した.1.マウス,ラットおよびイヌを用いたS-1の動態試験の結果,血漿中FTはいずれの動物種においてもCmaxに顕著な差は認められなかった.しかし,イヌのAUCは103155ng·hr/mlともっとも高く,ラットが53600ng·hr/ml,マウスは4180ng·hr/mlであった.この種差はT1/2値にも見られた.血漿中5-FUはマウスのCmax、が1081ng/mlと顕著に高く,ラットが282ng/mlともっとも低かった.しかしT1/2値はマウスがもっとも小さく,ラットおよびイヌは同程度であった.血漿中CDHPはマウスのCmaxが1815ng/mlと顕著に高かったものの,AUCはいずれの動物種においても顕著な差は見られなかった.血漿中OxoのCmaxおよびAUCはいずれもマウスで顕著に高く,ラットがもっとも低かった. 2.ラットおよびイヌのbioavailabilityを算出した結果,FTのbioavailabilityはいずれもほぼ100%であった.一方,CDHPはラットで36.8%,イヌでは27.0%であった.またOxoではラットが3.0%に対しイヌでは9.9%であった. 3.イヌを用いてFT,5-FU,CDHPおよびOxoの用量依存性について検討した.その結果,FT,CDHPおよびOxoについては用量に比例した推移を示すことが明らかになった.一方,5-FUは用量の増加率以上に濃度が高くなり,線形と仮定した場合の濃度に比べAUCは1.8倍から2.8倍の増加が認められた.これはS-1に配合されている5-FUの代謝酵素の可逆的な拮抗阻害剤であるCDHPが,投与量の増加に従いCmax,AUCが高くなることで5-FUの代謝阻害をより強め,長時間持続するため,5-FUの代謝クリアランスが低下したためであると推察される. |
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ISSN: | 0916-1139 |
DOI: | 10.2133/dmpk.12.656 |