リン脂質ポリマーを修飾したステンレス鋼表面の安定性と血液適合性

低侵襲治療法の一つとして, 狭窄した血管を回復させ, 血流を確保するためにステントが有用である. この材料として主にステンレス鋼が用いられている. しかしその抗血栓性は十分とはいえず, 表面での血栓の形成と付着が再狭窄の原因の一つとなる. このステント表面を2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン (MPC) ポリマーで修飾することにより, 血栓形成が抑制されると考えた. 本研究ではステンレス鋼表面におけるMPCポリマーの被覆安定性を期待し, ステンレス鋼と結合する4-メタクリロイルオキシエチルトリメリット酸無水物 (4-META) を含むポリマー (4-META/メタクリル酸メチル (...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in高分子論文集 Vol. 59; no. 7; pp. 432 - 437
Main Authors 森本, 展行, 佐藤, 育恵, 渡辺, 昭彦, 中林, 宣男, 岩崎, 泰彦, 石原, 一彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 高分子学会 2002
Online AccessGet full text

Cover

Loading…
More Information
Summary:低侵襲治療法の一つとして, 狭窄した血管を回復させ, 血流を確保するためにステントが有用である. この材料として主にステンレス鋼が用いられている. しかしその抗血栓性は十分とはいえず, 表面での血栓の形成と付着が再狭窄の原因の一つとなる. このステント表面を2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン (MPC) ポリマーで修飾することにより, 血栓形成が抑制されると考えた. 本研究ではステンレス鋼表面におけるMPCポリマーの被覆安定性を期待し, ステンレス鋼と結合する4-メタクリロイルオキシエチルトリメリット酸無水物 (4-META) を含むポリマー (4-META/メタクリル酸メチル (MMA)) の薄膜をステンレス鋼表面に形成させた後, 次いでMPCポリマーを被覆した. 4-META/MMAポリマーの薄膜を介すことによりMPCポリマーの溶出が有意に抑制され, 37℃の水中で14日間浸漬した後も良好な血液適合性を発現した.
ISSN:0386-2186
1881-5685
DOI:10.1295/koron.59.432