体育専攻学生の競技意欲を規定する要因の探求

本研究では, 大学の運動部に所属している体育専攻の学生を対象に, 彼らの競技意欲に影響するクラブ環境や大学生活の要因を明らかにしようとした。競技意欲の指標としては, 競技意欲の低下した状態を表す「バーンアウト」と競技意欲が高く, 練習に積極的に参加している状態を表す「練習への熱中度」の2つが用いられた。要因間の相関分析からは以下のような結果が得られた。 運動部員の競技意欲の低下は, 競技成績の伸び悩みや不振をきっかけとしておこり, 部員の神経質的性格や日頃の怪我への不適切な対処といった個人変数に加えて, 所属するクラブ内の人間関係が強く関わっていた。 クラブ内の人間関係は競技意欲に関連していた...

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Published inスポーツ教育学研究 Vol. 16; no. 2; pp. 105 - 112
Main Authors 土屋, 裕睦, 長谷川, 悦示, 日野, 克博
Format Journal Article
LanguageEnglish
Japanese
Published 日本スポーツ教育学会 30.11.1996
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ISSN0911-8845
1884-5096
DOI10.7219/jjses.16.105

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Summary:本研究では, 大学の運動部に所属している体育専攻の学生を対象に, 彼らの競技意欲に影響するクラブ環境や大学生活の要因を明らかにしようとした。競技意欲の指標としては, 競技意欲の低下した状態を表す「バーンアウト」と競技意欲が高く, 練習に積極的に参加している状態を表す「練習への熱中度」の2つが用いられた。要因間の相関分析からは以下のような結果が得られた。 運動部員の競技意欲の低下は, 競技成績の伸び悩みや不振をきっかけとしておこり, 部員の神経質的性格や日頃の怪我への不適切な対処といった個人変数に加えて, 所属するクラブ内の人間関係が強く関わっていた。 クラブ内の人間関係は競技意欲に関連していたが, そのタイプによって競技意欲に対する働きかけが異なっていた。良好な友人関係は特にバーンアウト傾向の抑制に関わり, また良好なコーチとの関係は特に練習への熱中度の高まりに関わっていた。 クラブ環境の条件以外に部員の競技意欲に関連する要因には, 異性関係やアルバイトなどを含む生活環境に対する肯定的認知, 将来の目的への積極的な取り組みがあった。特に将来の目的への取り組みは, 練習への熱中度だけでなく, 学業に対する前向きな姿勢にも関係していた。 今後は, 所属運動部の属性, 学生の個人差等を考慮にいれた研究によって, ここでの知見を検証していく必要があろう。
ISSN:0911-8845
1884-5096
DOI:10.7219/jjses.16.105