表面電子分光法における信号の減衰は如何に記述されるか VI. 元素における双極子行列要素平方の計算とPenn algorithmによるIMFPの計算

元素固体における双極子行列要素平方(Mtot2)を光学的エネルギー損失関数(ELF)から計算し,単体原子の結果と比較した.その結果,固体元素における Mtot2 は対応する原子のそれよりも大幅に小さく,さらに原子番号依存性は両者で大きく異なっていた.また,IMFP値からBetheの式を用いてMtot2の計算を行い,ELFから直接計算されるMtot2と比較した.その結果,元素固体ではスカンジウムを除いてBetheの式から計算されたMtot2は,ELFから直接計算した値よりも大きく,その差はおよそ 5%以内であった.さらに,実測したエネルギー損失関数とLindhardの誘電関数から電子の非弾性平均...

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Published inJournal of Surface Analysis Vol. 30; no. 3; pp. 168 - 182
Main Authors 篠塚, 寛志, 田沼, 繁夫
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 表面分析研究会 2024
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ISSN1341-1756
1347-8400
DOI10.1384/jsa.30.168

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Summary:元素固体における双極子行列要素平方(Mtot2)を光学的エネルギー損失関数(ELF)から計算し,単体原子の結果と比較した.その結果,固体元素における Mtot2 は対応する原子のそれよりも大幅に小さく,さらに原子番号依存性は両者で大きく異なっていた.また,IMFP値からBetheの式を用いてMtot2の計算を行い,ELFから直接計算されるMtot2と比較した.その結果,元素固体ではスカンジウムを除いてBetheの式から計算されたMtot2は,ELFから直接計算した値よりも大きく,その差はおよそ 5%以内であった.さらに,実測したエネルギー損失関数とLindhardの誘電関数から電子の非弾性平均自由行程(IMFP)を計算するPennのアルゴリズムの詳細について,Mathematicaを用いて具体的に計算方法を詳細に述べた.この方法の利点は,damping factorを含むLindhard関数を使用することにより,非常に簡単にIMFP計算がプログラミングできることである.しかし,未確定のdamping factorがインプットパラメータに入ること,さらに計算時間が長いと言う欠点がある.IMFP計算を高速に行うためにはdamping factorを含まない長波長極限におけるLindhard関数を使用してFORTRANやJuliaによる計算が必要となる.そこで,それらに代表される手続き型プログラミングにおいて,Pennのアルゴリズムで実際に数値計算を行う場合に必須となる項目について詳細に解説した.
ISSN:1341-1756
1347-8400
DOI:10.1384/jsa.30.168