ケーブルテレビ事業の地域密着性と差別化戦略に関する政府企業間関係からの一考察 ケーブルインターネット高加入率地域を対象とした事例研究を中心に

日本では「地域メディア」サービスの提供がケーブルテレビの主要な社会的役割であるとされてきたが、現在、制度とサービスの両面において、ケーブルテレビが果たしうる社会的役割は必ずしも「地域メディア」に限定されないものとなっている。 そこで本論文では「地域メディア」機能に重点をおく事業者とそれ以外のサービスをより積極的に展開する事業者との違いが何に起因するか、ケーススタディーを通じて考察した。その結果、両者の違いは、ケーブル事業者とサービスエリアの地域情報化政策や地方自治体との関係性など、政府企業間関係の密接度に起因することが明らかになった。政府企業間関係の密接度が高い場合には、「地域メディア」サービ...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in情報通信政策レビュー Vol. 9; pp. 91 - 113
Main Author 米谷, 南海
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 総務省情報通信政策研究所 19.11.2014
Subjects
Online AccessGet full text

Cover

Loading…
More Information
Summary:日本では「地域メディア」サービスの提供がケーブルテレビの主要な社会的役割であるとされてきたが、現在、制度とサービスの両面において、ケーブルテレビが果たしうる社会的役割は必ずしも「地域メディア」に限定されないものとなっている。 そこで本論文では「地域メディア」機能に重点をおく事業者とそれ以外のサービスをより積極的に展開する事業者との違いが何に起因するか、ケーススタディーを通じて考察した。その結果、両者の違いは、ケーブル事業者とサービスエリアの地域情報化政策や地方自治体との関係性など、政府企業間関係の密接度に起因することが明らかになった。政府企業間関係の密接度が高い場合には、「地域メディア」サービスを十分に提供できるだけの財政支援や地域密着性といったアドバンテージがケーブルテレビ事業者に与えられるが、密接度が低い場合には、採算性の低い「地域メディア」サービスを事業の中核にしながら一定の収益をあげていくには困難が生じるため、事業者は経営方針の変換を迫られる。このように、密接度の濃淡にかかわらず、企業政府間関係がケーブルテレビ事業者のあり方に与える影響は非常に大きいといえる。
ISSN:2435-6921
DOI:10.24798/icpr.9.0_91