プロテインS欠損症に起因すると考えられた 上腸間膜静脈血栓症による空腸壊死の1例
上腸間膜静脈血栓症による空腸壊死を認め, 先天性プロテインS欠損症による凝固異常が原因と考えられた1例を報告する. 症例は53歳の男性で, 下腹部痛を主訴に近医を受診した. 発熱と腹部膨隆, 下腹部に圧痛, 反跳痛を認めた. 腹部単純X線像では著明に拡張した小腸ガス像, 腹部CTでは門脈・上腸間膜静脈の閉塞像, 腹水の貯留, 小腸の拡張と壁肥厚を認め, 緊急手術を施行した. 手術ではトライツ靭帯より70cmの空腸より約120cmにわたり暗赤色に変化した空腸を認め, 空腸静脈の一部は血栓により閉塞していた. うっ血性の小腸壊死と考え, 病変部を含めた小腸切除, 小腸側々吻合, 腸瘻造設術を施行し...
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Published in | 日本消化器外科学会雑誌 Vol. 39; no. 8; pp. 1418 - 1423 |
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Main Authors | , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本消化器外科学会
2006
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ISSN | 0386-9768 1348-9372 |
DOI | 10.5833/jjgs.39.1418 |
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Summary: | 上腸間膜静脈血栓症による空腸壊死を認め, 先天性プロテインS欠損症による凝固異常が原因と考えられた1例を報告する. 症例は53歳の男性で, 下腹部痛を主訴に近医を受診した. 発熱と腹部膨隆, 下腹部に圧痛, 反跳痛を認めた. 腹部単純X線像では著明に拡張した小腸ガス像, 腹部CTでは門脈・上腸間膜静脈の閉塞像, 腹水の貯留, 小腸の拡張と壁肥厚を認め, 緊急手術を施行した. 手術ではトライツ靭帯より70cmの空腸より約120cmにわたり暗赤色に変化した空腸を認め, 空腸静脈の一部は血栓により閉塞していた. うっ血性の小腸壊死と考え, 病変部を含めた小腸切除, 小腸側々吻合, 腸瘻造設術を施行した. 術後はヘパリン, ワルファリンによる抗凝固療法を行い退院した. 術後の血液検査で遊離プロテインS抗原量の低下を認め, 父, 兄, 長男でもプロテインS活性値, 遊離抗原量の低下を認め, 先天性プロテインS欠損症による凝固異常が本疾患の原因と考えられた. |
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ISSN: | 0386-9768 1348-9372 |
DOI: | 10.5833/jjgs.39.1418 |