剖検例からみた肝細胞癌におけるリンパ節転移の検討 肝硬変合併の有無による比較

肝細胞癌剖検例103例を,肝硬変群90例,非肝硬変群13例の間で,リンパ節転移形式について比較検討した.1.リンパ節転移の頻度は,硬変群90例中27例(30%),非硬変群13例中7例(54%)で,非硬変群に高頻度に認められた.2.転移の方向は,硬変群では上行性あるいは下行性と,一方向のみの症例が多く認められたが,非硬変群では両方向への転移症例が多く認められた.3.群別では,1群から4群までの全群に転移を認めたものは非硬変群に多かったが,4群にのみ転移の認められたものは硬変群に多かった.4.硬変群では,1個のリンパ節にのみ転移していた症例が27例中8例(30%)に認められ,その最大径は12cmで...

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Published in肝臓 Vol. 29; no. 3; pp. 341 - 346
Main Authors 三好, 康雄, 今岡, 真義, 佐々木, 洋, 柴田, 高, 石川, 治, 大東, 弘明, 岩永, 剛, 石黒, 信吾, 和田, 昭
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本肝臓学会 25.03.1988
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Summary:肝細胞癌剖検例103例を,肝硬変群90例,非肝硬変群13例の間で,リンパ節転移形式について比較検討した.1.リンパ節転移の頻度は,硬変群90例中27例(30%),非硬変群13例中7例(54%)で,非硬変群に高頻度に認められた.2.転移の方向は,硬変群では上行性あるいは下行性と,一方向のみの症例が多く認められたが,非硬変群では両方向への転移症例が多く認められた.3.群別では,1群から4群までの全群に転移を認めたものは非硬変群に多かったが,4群にのみ転移の認められたものは硬変群に多かった.4.硬変群では,1個のリンパ節にのみ転移していた症例が27例中8例(30%)に認められ,その最大径は12cmであった.以上より,肝硬変合併肝細胞癌のリンパ節転移は,その頻度が非硬変群のそれより低いものの,リンパ液の産生増加と線維化の増生に基づくリンパ管の閉塞によって側副リンパ流の形成がおこるため,特異なリンパ節転移像を呈することが推定された.
ISSN:0451-4203
1881-3593
DOI:10.2957/kanzo.29.341