弓部大動脈近傍の術中大血管損傷の治療 超低体温循環停止法の有用性

術中予期せぬ弓部大動脈近傍の大血管損傷により, 修復に超低体温循環停止法 (一部逆行性脳灌流法を併用) を用いた5例について検討した. 症例の内訳は出血性損傷3例, 急性解離2例であった. 修復および手術遂行に要した体外循環時間は159~367分 (平均199分), 循環停止時間は20~44分(平均32分), 循環停止温度は膀胱温19.5~22.0℃ (平均21.0℃), 脳保護補助手段として逆行性脳灌流法を2例に使用した. 術後覚醒までの時間は持続鎮静降圧療法を施行した症例1を除き4~9時間で, 全例神経学的合併症はみられず退院した. 超低体温循環停止法は, (1) 血管壁の緊張緩和. (2...

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Published in日本心臓血管外科学会雑誌 Vol. 27; no. 6; pp. 360 - 363
Main Authors 齊藤, 力, 川人, 宏次, 長谷川, 伸之, 三澤, 吉雄, 加藤, 盛人, 布施, 勝生
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会 15.11.1998
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Summary:術中予期せぬ弓部大動脈近傍の大血管損傷により, 修復に超低体温循環停止法 (一部逆行性脳灌流法を併用) を用いた5例について検討した. 症例の内訳は出血性損傷3例, 急性解離2例であった. 修復および手術遂行に要した体外循環時間は159~367分 (平均199分), 循環停止時間は20~44分(平均32分), 循環停止温度は膀胱温19.5~22.0℃ (平均21.0℃), 脳保護補助手段として逆行性脳灌流法を2例に使用した. 術後覚醒までの時間は持続鎮静降圧療法を施行した症例1を除き4~9時間で, 全例神経学的合併症はみられず退院した. 超低体温循環停止法は, (1) 血管壁の緊張緩和. (2) 良好な無血視野. (3) 自己血回収が可能. (4) 低体温による臓器保護. などの利点がある. 従って本法は弓部大動脈近傍の大血管損傷の修復に際して, 重大な合併症を回避しうる可能性があり, 遮断鉗子下での修復が困難な場合には速やかに選択すべき方法と考えられた.
ISSN:0285-1474
1883-4108
DOI:10.4326/jjcvs.27.360