病理組織により心膜嚢胞と鑑別し得た胸腺嚢胞の1例

気管支喘息発作で入院時に偶然発見され, 病理組織にて確定診断された胸腺嚢胞の1例を報告した. 症例は70歳女性. 発作寛解期は自覚症状無く, 他覚所見も頸部甲状腺腫以外特に認めなかった. 入院時胸部X線写真で右心横隔膜角に境界鮮明, 辺縁平滑な腫瘤陰影を認めた. CT, MRIにより, 腫瘤は上縦隔から右心横隔膜角にかけ前縦隔に存在し, 内部はほぼ均一な低吸収域で, 造影増強効果は無いことが示され, 嚢胞が示唆された. 甲状腺との連がりはなかった. 開胸術により, 漿液に満たされた長径15cmの多房性嚢胞を摘出した. 嚢胞は良性の繊毛円柱上皮で被覆され, 壁に胸腺組織が存在することより, 胸腺...

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Published in日本胸部疾患学会雑誌 Vol. 35; no. 9; pp. 1003 - 1007
Main Authors 岡山, 道子, 廣澤, 弘七郎
Format Journal Article
LanguageEnglish
Published 社団法人 日本呼吸器学会 25.09.1997
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Summary:気管支喘息発作で入院時に偶然発見され, 病理組織にて確定診断された胸腺嚢胞の1例を報告した. 症例は70歳女性. 発作寛解期は自覚症状無く, 他覚所見も頸部甲状腺腫以外特に認めなかった. 入院時胸部X線写真で右心横隔膜角に境界鮮明, 辺縁平滑な腫瘤陰影を認めた. CT, MRIにより, 腫瘤は上縦隔から右心横隔膜角にかけ前縦隔に存在し, 内部はほぼ均一な低吸収域で, 造影増強効果は無いことが示され, 嚢胞が示唆された. 甲状腺との連がりはなかった. 開胸術により, 漿液に満たされた長径15cmの多房性嚢胞を摘出した. 嚢胞は良性の繊毛円柱上皮で被覆され, 壁に胸腺組織が存在することより, 胸腺嚢胞と診断された. 本症は近年増加しており, 前縦隔の嚢胞性疾患を診断する際に念頭に置くべきであると考えられた.
ISSN:0301-1542
1883-471X
DOI:10.11389/jjrs1963.35.1003